株式会社船井総合研究所(船井総研)警備ビルメンテナンス経営研究会です。施設警備業を展開する中小企業の経営者・幹部・人事担当者の皆様へ、人材不足や業績拡大に直面する今、法人営業の強化が急務です。本記事では、施設警備会社における営業活動の基本から実践的なコツ、育成の仕組みまで、現場で活かせるノウハウを徹底解説いたします。
なぜ施設警備会社に法人営業が必要なのか?
施設警備業は、建物や施設の安全を守る仕事であり、業務の特性上、安定した契約先の獲得が重要となります。中小企業庁が定義する中小企業では、従業員数が100人以下、または資本金が1億円以下の企業が該当し、多くの施設警備会社がこの範疇に入ります。
こうした中小の警備会社は、大手と比べて営業力や人材確保に課題を抱えることが多く、受動的な案件獲得では業績の維持が難しくなりつつあります。そこで、法人営業を強化することが、経営の安定化や新規開拓、さらには人材確保にもつながる重要な施策となります。
特に近年は、建設業や医療機関、商業施設などからの警備ニーズが高まっており、法人顧客への能動的なアプローチが成果に直結する時代に変化しています。
また、顧客からの信頼構築には、企業の姿勢や人材の質が問われるため、営業を通じた企業価値の発信がますます重要になります。
施設警備業における法人営業の現状と課題
施設警備会社の法人営業は、依然として紹介や既存顧客からの追加契約に依存しているケースが目立ちます。そのため、営業専任者がいない、営業資料が未整備である、人材教育が追いつかないといった課題が浮き彫りになっています。
特に中小規模の企業では、限られた人材で営業と現場を兼任していることも多く、営業活動の時間が確保しづらいのが現実です。また、営業ノウハウが属人化しており、属人的な仕事の進め方が新規人材の育成を阻害している面もあります。
業界全体としては、営業人材の確保と教育、そして仕組み化が遅れており、結果として競争力の低下や業績の停滞を招いています。警備業法や法定研修といった法律面への理解不足も営業上の障壁となっている場合があります。
したがって、法人営業の構造的な見直しと、営業教育の再構築が中小警備会社の経営にとって不可欠となっています。
営業先リストの作り方|狙うべき法人の特徴とは?
営業活動を効率よく進めるためには、まず営業先リストの精度を高める必要があります。闇雲にアプローチするのではなく、自社の強みと相性の良い業種や規模を明確にしましょう。
狙うべき法人の特徴としては、1つ目に「常時施設を稼働しており、一定の警備体制が必要な企業」です。例えば、医療機関、公共施設、物流センターなどが該当します。
2つ目に「委託警備を必要としているが、価格より信頼性を重視する法人」も有望です。特に地方の中堅企業では、地元密着型のサービスに価値を見出す傾向があります。
3つ目に「既存の警備会社に不満を持っている法人」も狙い目です。契約更新タイミングを把握し、タイミング良く提案できるよう情報収集を徹底することが重要です。
営業リストの作成においては、地域の商工会議所名簿、業界団体、自治体の企業データなどを活用することで、効果的なターゲティングが可能となります。
初回アプローチの基本|メール・電話の最適な使い分け
営業先リストが完成した後は、いよいよアプローチの段階に入ります。初回接触の手段として多く使われるのが、メールと電話です。それぞれに長所と短所があり、目的に応じた使い分けが求められます。
メールは、相手の業務を妨げずに情報提供できる点が強みです。警備内容や実績、人材の質などを簡潔にまとめ、提案の概要を伝えることができます。一方で、見られないままスルーされるリスクもありますので、件名や冒頭文に工夫が必要です。
電話は、相手の反応を見ながら説明できる利点がありますが、業務中にかけると迷惑になることもあります。そのため、事前にメールを送り、その後に電話でフォローする方法が効果的です。
また、相手企業の業種や所在地に応じて、最適な時間帯や担当者へのつなぎ方にも配慮が必要です。公共施設や医療機関であれば、業務が落ち着く時間帯を狙うことが成果につながります。
初回アプローチでは「提案」よりも「課題のヒアリング」に徹する姿勢が重要です。無理な売り込みではなく、誠実な姿勢が信頼関係の構築につながるからです。
相手の困りごとを丁寧に聴き取り、それに応じた提案へとつなげることで、信頼を得る営業活動が実現できます。
施設警備の魅力を伝える「営業トーク」の作り方
法人営業の現場では、施設警備の価値を分かりやすく、かつ魅力的に伝えるトークスキルが求められます。中小企業の施設警備会社においては、営業担当者のスキルが受注率に直結するため、営業トークの質が経営そのものを左右することになります。
まず重要なのは、警備業務が「安心・安全の提供」であることを明確に伝えることです。顧客が警備会社に求めるのは、単なる人員の配置ではなく、リスク回避とトラブル未然防止といった目に見えにくい価値です。
例えば、商業施設では「万引きや迷惑行為の抑止」、病院では「クレーム対応や案内業務の負担軽減」など、施設ごとに異なるニーズを想定した話し方が求められます。
その際、「当社ではこうしています」という説明だけでなく、「御社のこの点において、こういったリスクを軽減できます」といった相手の立場に立った具体的な表現が効果的です。
また、実績紹介は非常に有効な要素です。ただし、単なる導入実績の羅列ではなく、「実績によってどう改善されたか」「どんな課題をどのように解決したか」といったストーリー形式で語ることが説得力を高めます。
営業トークの中には、施設警備員の教育・研修体制に触れることも大切です。「人材育成を重視している」ことは企業の信頼感を高める要因になります。現場での対応力を強調することで、警備員一人ひとりが企業の顔であるという認識を相手に持ってもらえるようになります。
さらに、価格競争になりやすい業界特性を考慮し、「価格以外の価値」を伝える力が差別化につながります。たとえば「迅速な人員手配力」「独自のチェック体制」「24時間対応の緊急サポート」など、自社の強みを具体的に打ち出しましょう。
最後に、営業トークの成否はロールプレイングを通じて磨かれます。社内での模擬商談を定期的に実施し、想定質問への対応や説明の一貫性を高める努力が、営業担当者の人材育成にも直結いたします。
価格だけに頼らない!提案型営業で差別化する方法
施設警備会社の営業において、価格競争は避けられない要素です。しかし、価格だけで勝負していては、長期的な関係構築や収益の安定は望めません。そのため、価格ではなく価値で選ばれる提案型営業への転換が、中小企業の経営にとって極めて重要となります。
提案型営業とは、相手の課題を深く理解し、それに対して最適な解決策を提示する営業手法です。施設警備業でこれを実現するには、単に人員数や業務時間を提示するだけでなく、「警備によってどのような効果が得られるか」を伝える視点が求められます。
例えば、従業員の安全意識が向上したことで事故が減少した、来訪者のクレームが減ったことで顧客満足度が上がった、といった定性的な成果に注目することが差別化に繋がります。
さらに、他社では提供できない細やかな対応力や、地域密着型ならではの柔軟なサポート体制を強調することが、法人顧客からの評価を高める要因となります。
このような提案を可能にするには、現場担当者との連携も欠かせません。営業担当だけでなく、警備員や指導教育責任者が現場の課題を共有し、チームとして価値提供する姿勢が信頼を生むのです。
また、提案資料の工夫も成果に直結します。文章だけではなく、業務改善のビフォーアフター、トラブル対応の事例など、図やグラフを活用することで視覚的にも訴求力が増します。
提案型営業を定着させるには、社内教育の仕組みも重要です。OJTだけに頼るのではなく、営業マニュアルや提案テンプレートを整備し、人材が交代しても一定の品質で営業が行える体制づくりが必要となります。
そのうえで、価格交渉の場面では「なぜこの価格なのか」「この価格にどのような価値が含まれているのか」を明確に伝える技術が求められます。曖昧な価格提示は信用を失う要因となるため、事前準備を怠らないようにしましょう。
提案型営業を実践することで、「価格は安くないが、任せて安心」というブランドポジションを確立することが可能となり、長期的な業績安定につながる結果が得られます。
商談機会を増やすには?展示会・紹介・SNSの活用術
中小規模の施設警備会社が新規法人顧客との商談機会を創出するには、従来の紹介頼りの手法に加えて、積極的な外部チャネルの活用が欠かせません。特に展示会、紹介スキーム、SNSなどは、予算を抑えながらも高い集客力を持つ手段です。
まず展示会については、業界展示会や地域の防災・安全フェアなどに出展することで、ターゲット業界との接点を持つことができます。ブースでは警備のデモンストレーションや教育研修の紹介を行うことで、他社との差別化が図れます。
展示会出展は費用がかかるという懸念がありますが、小規模ブースでの出展や共催型の参加も可能であり、費用対効果を重視した戦略が可能です。特に、地域に根差した企業との接点を持ちやすく、地元企業への営業展開に強みを発揮します。
次に紹介の活用ですが、既存顧客からの紹介依頼を仕組み化することがポイントです。具体的には、紹介が発生した際の特典制度や、満足度の高い顧客にリファラルインタビューを実施するなど、自然に紹介が生まれる仕掛けを整える必要があります。
紹介における留意点として、単に「紹介してください」と頼むだけでなく、「こんな企業様があればご紹介いただけませんか?」というように、対象企業像を明確に伝えることが成果につながります。
さらに、SNSの活用も見逃せません。とくにBtoBにおいては、LinkedInやFacebookの企業ページを使った情報発信が有効です。警備員の教育風景、安全対策の実績、地域貢献活動の様子などを定期的に発信することで、信頼性や社風を間接的に伝えることができます。
SNSでの発信は「採用活動」や「地域との関係づくり」にも好影響を与えるため、営業活動と並行してブランディング効果が得られるというメリットがあります。特に施設警備のような目立ちにくい仕事においては、日々の活動の価値を丁寧に伝える発信が差別化の武器になります。
このように、展示会、紹介、SNSという複数チャネルを並行して活用することで、施設警備会社における営業活動の接点は格段に広がります。重要なのは、これらを単発で終わらせず、定期的・継続的に取り組む体制をつくることです。
こうした取り組みは、将来的に人材確保や企業イメージの向上にもつながり、経営全体への波及効果が期待できます。
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