株式会社船井総合研究所(船井総研)警備ビルメンテナンス経営研究会です。本コラムは、警備業を展開する中小企業の経営者・幹部・人事担当者を対象に、出入管理や入退室管理の方法や導入のポイントを詳しく解説します。業績向上や人材育成、安全な職場環境の構築に役立つ知識を提供します。
出入管理・入退室管理とは何か?基本概念を整理する
出入管理とは、建物や施設に誰がいつ出入りしたかを記録し、必要に応じて制限する仕組みを指します。
入退室管理は、その中でも建物の特定区域や部屋単位での出入りを管理する行為を意味します。
この2つは警備の中核を担う業務であり、情報セキュリティや人命安全に直結する役割を持っています。
例えば、企業内での重要資料の保管場所や、外部委託業者の作業区域への立ち入りなどを適切に制御することで、事故や情報漏洩のリスクを大幅に低減できます。
中小企業では人材が限られているケースが多いため、こうした管理の仕組みを業務に組み込むことで、効率的な経営につながるといえます。
特に昨今では、法令遵守や働く環境の安全性確保が社会的に求められており、これに応える手段として出入管理の重要性が再認識されています。
そのため、中小の警備会社においても、出入管理の基礎知識は経営や現場運営に欠かせない要素といえるでしょう。
出入管理を適切に行うことで、従業員の規律意識が高まり、業務効率の改善にも寄与します。
また、管理の透明性が高まることで、社内の信頼関係を強固にする効果も見込めます。
今後、警備業界が持続的に発展していくためには、出入管理の基本的な理解が不可欠であると考えられます。
警備業務における出入管理の重要性とは
警備業務において出入管理は、単なる入退出の記録を超えて、安全確保という本質的な目的を持っています。
なぜなら、無関係者や不審者の侵入を防止することが、警備の最重要課題の一つだからです。
たとえば、工場や研究所など機密性の高い場所では、誰がどこに入ったのかを正確に把握する必要があります。
それによって、万一の事故や不正が発生した際にも、迅速に原因を特定することが可能となります。
また、警備員の仕事を効率化するという観点からも、出入管理は役立ちます。
人力だけで出入りを確認するのは限界がありますが、システムを導入することで負担が軽減され、より広範囲での警備が可能になります。
中小の警備会社においては、業務の効率化が経営課題となりがちです。
その中で、出入管理を強化することで、人手不足への対応にもなり得ます。
加えて、出入管理がしっかりしている企業は、顧客からの信頼を得やすくなります。
契約先に対して「安全管理ができている会社」という印象を与えることは、営業活動や人材採用にも好影響を与えます。
このように、出入管理は警備業務の基盤であり、組織としての信頼性を高める手段でもあります。
結果として、それが警備会社の業績向上にもつながるという視点を忘れてはなりません。
入退室管理が企業のセキュリティ強化につながる理由
入退室管理は、施設内のセキュリティを向上させる手段として極めて効果的です。
企業がセキュリティを強化したいと考えた際、まず見直すべきなのが「誰がどこにアクセスできるのか」という点です。
たとえば、オフィスにおける機密情報の保管庫や、ITサーバールームなどは、限られた人材のみが入れるよう制御すべき場所です。
こうした区域へのアクセスを厳密に管理することで、情報漏洩や内部不正のリスクを大幅に低下させられます。
また、入退室履歴を記録することで、万一の問題発生時にも「いつ・誰が・どこへ」出入りしたかを明確にできます。
この情報は、社内の監査や法的対応の場面でも重要な証拠となるでしょう。
加えて、従業員の行動をある程度可視化することにより、勤務態度や勤怠管理の補完にもなります。
これは人材育成や教育面においても有用で、特に新人警備員の行動チェックなどに役立ちます。
入退室管理は、単に防犯のためだけでなく、経営戦略の一部としても活用可能です。
人材が適切に配置されているか、業務が円滑に遂行されているかを確認する手段として、経営者にも活用していただけます。
結果として、入退室管理の整備は、会社の経営基盤そのものを強化することにつながるのです。
中小警備会社における出入管理の現状と課題
中小企業庁の定義に基づけば、中小の警備会社は資本金3億円以下または従業員300人以下の企業を指します。
こうした企業では、人的・金銭的リソースが限られていることが多く、出入管理に手が回らない現場も少なくありません。
特に、手書きでの出入り記録や口頭による確認など、旧来のアナログな運用に頼っている企業が依然として存在します。
その結果、記録の精度や証拠能力が低下し、万一の際の責任追及や再発防止が難しくなるという問題が発生します。
また、人材の流動性が高い職場においては、出入りするスタッフの管理が煩雑化する傾向があります。
日雇いの警備員や外注作業員が出入りするケースでは、個人ごとの履歴管理が困難になることもあります。
一方で、出入管理をシステム化したいと思っても、予算や運用スキルの面で障壁があるのも事実です。
導入後の教育体制や保守対応にまで手が回らず、形だけの運用になってしまう例も見受けられます。
さらに、警備会社自身が委託先の出入管理業務を担っている場合は、他社の施設ルールに合わせる必要もあり、標準化が難しい側面もあります。
それゆえ、中小の警備会社では、「現場によって管理体制が異なる」という非効率な状態に陥りがちです。
今後は、課題を明確に把握した上で、段階的な改善を図ることが必要です。
無理のない範囲から、出入管理の最適化を進める姿勢が求められています。
アナログ式の出入管理方法とそのメリット・デメリット
アナログ式の出入管理とは、紙の名簿や伝票、手動での記録台帳などを用いて、出入りを管理する方法です。
現在でも多くの中小企業や警備会社がこの方式を採用しています。
その最大のメリットは、初期コストが非常に安い点です。
専用の機器やシステムを導入せずとも、すぐに運用を開始できるという利点があります。
また、高齢のスタッフでも扱いやすく、教育や育成の負担が少ないという点も特長です。
一方で、記録の正確性や改ざん防止という観点では、非常に脆弱な面を持っています。
記入ミスや記録漏れ、記録の改ざん、第三者による不正な代筆などが発生しやすく、セキュリティ面では不安が残ります。
さらに、膨大な紙記録を保管・検索する労力も無視できません。
業績拡大に伴い人材が増えてくると、手書き記録では業務負担が急激に増加する恐れがあります。
また、非常時に記録を即座に確認できないと、トラブル対応が後手に回ってしまうリスクもあります。
アナログ式の出入管理は、短期的・限定的には有効ですが、将来的な成長や安全強化を見据えると限界があることを理解しておくべきです。
ICカード・テンキーなど電子式入退室管理の特徴とは
電子式の入退室管理は、ICカードやテンキーなどを用いて扉の開閉を制御する仕組みです。
中小の警備会社でも比較的導入しやすい代表的な方式といえるでしょう。
ICカード方式では、個人ごとに発行されたカードをかざすことで認証が行われます。
テンキー式では、事前に登録された暗証番号を入力して扉を開ける仕組みです。
いずれの方式も、利用者を限定できる点と履歴の自動記録という利点があります。
また、管理者がリモートで設定や履歴確認を行えるシステムも増えており、柔軟な運用が可能です。
警備業務との親和性も高く、巡回業務や施錠確認との併用に適しています。
一方で、ICカードの紛失や暗証番号の漏洩といったリスクも存在します。
加えて、利用者が多い現場ではカードの再発行や番号変更が頻繁に発生し、管理が煩雑になる恐れもあります。
導入前には、どの方式が自社の現場に適しているかを十分に検討することが大切です。
また、導入後の教育やマニュアル整備を怠ると、現場での混乱やトラブルの原因となるため注意が必要です。
顔認証・生体認証による次世代の入退室管理とは
近年注目されているのが、顔認証や指紋認証といった生体認証を活用した入退室管理システムです。
これらは「なりすまし」を防ぐ高精度な認証手段として、警備業界でも導入が進みつつあります。
顔認証は、登録された顔情報とリアルタイムの映像を照合することで、扉の開閉を制御します。
指紋認証や虹彩認証などもありますが、接触が不要な点で顔認証が特に注目されています。
生体情報は個人固有のため、ICカードのような盗難や紛失のリスクがありません。
また、履歴の記録も高精度で残るため、不正侵入の検出にも強みを発揮します。
一方で、初期導入費用が高額になりやすく、精度の維持には定期的なメンテナンスが欠かせません。
また、認証に失敗した際のバックアップ手段(例:管理者の許可)も必要になります。
中小の警備会社が導入する場合は、限定的なエリアから試験的に導入するのが現実的です。
将来的な業務効率化や信頼性向上を目指すのであれば、生体認証は有力な選択肢となるでしょう。
【船井総研】警備業・ビルメンテナンス業経営の無料個別相談サービス
私たち船井総研警備ビルメンテナンス経営研究会では、警備業・ビルメンテナンス業経営などの業種・業態に特化した専門的なコンサルティングサービスを提供しています。このような変化の激しい時代の中で、様々なサポートをしていきたいと考え、日々コンサルティングを実施させていただいております。それに際し無料個別相談のお申し込みを受け付けしております。この機会にぜひ下記詳細をご確認くださいませ。
警備業・ビルメンテナンス業経営・採用などに関する無料個別相談サービスはこちらから
警備業の関連記事
本コラムの関連記事は下記をご覧くださいませ。
【施設警備会社の今後の経営手法!】企業の成長や採用強化に必要なこと
【施設警備会社で発生する費用・コストとは?】最適化する方法も含めて解説!
警備業・ビルメンテナンス業の最新時流、経営ノウハウが満載の無料メールマガジン
株式会社船井総合研究所(船井総研)セキュリティー・メンテナンスグループでは、「警備スタッフ・ビルメンテナンススタッフの人材採用・人材募集」、「(新規事業としての)警備業の立ち上げ」など、警備業・ビルメンテナンス業の経営全般の最新情報をお伝えしております。
日々のコンサルティング活動の中での成功事例や、時流の変化、戦略論など、現場主義を大切にした最新コンサルティングノウハウを随時発信していきます!この機会にぜひご登録くださいませ。