中小規模のビルメンテナンス会社の費用・経費とは?
- カテゴリ:
- ビルメンテナンス業界 営業
株式会社船井総合研究所(船井総研)警備ビルメンテナンス経営研究会です。こちらはビルメンテナンス業を展開する中小企業の経営者・幹部・人事担当者の皆様に向けの記事です。ビルメンテナンス会社における代表的な費用・経費構造とその最適化方法について詳しく解説します。人件費、資機材費、外注費などの内訳から、利益確保のためのコスト戦略まで、経営改善に直結する視点を提供いたします。
ビルメンテナンス業における主な費用項目とは?
ビルメンテナンス会社の経営において、最も重要なテーマの一つが費用構造の理解です。特に中小規模の企業では、どの費用項目にどの程度の資金が使われているのかを正確に把握することが、収益性の向上に直結いたします。
一般的に、ビルメンテナンス業の費用は「人件費」「資機材費」「外注費」「修繕費」「保険料」などに分類されます。これらはそれぞれ独立して存在しているように見えて、実際には業務の内容や契約の形態によって密接に関係してまいります。
とくに清掃や設備管理のような日常業務に関わる部分では、人件費と資機材費が高い割合を占めます。定期点検や緊急対応のような非定型業務になると、外注費や特別な資材コストが発生いたします。
また、オフィスビルや商業施設、公共施設など、建物の種類によって必要とされる作業の頻度や専門性が異なるため、それに応じて経費も大きく変動いたします。
ビルメンテナンス会社が適正な費用管理を行うには、まず「自社で発生する費用項目を明確に分類」し、「各項目の比率を定期的にモニタリング」することが求められます。
このような可視化を行うことにより、将来的なコスト予測や利益率改善の指針が立てやすくなるといえるでしょう。
なお、中小企業庁が提示する中小企業の定義において、ビルメンテナンス業は「サービス業」に該当し、資本金5,000万円以下または従業員100人以下の企業が該当します。これに該当する企業は、自社の事業規模に見合った費用構造を意識すべきです。
人件費が占める割合とその内訳
中小規模のビルメンテナンス会社において、最も大きな経費が「人件費」です。現場スタッフの給与をはじめ、社会保険料や賞与、管理職の人件費まで含まれます。
とりわけ定期清掃・日常清掃などの業務は、機械では代替が難しく、人手による対応が求められるため、人件費の割合が全体の50〜70%を占めるケースも少なくありません。
このような中で、スタッフの配置やシフト管理の工夫により、業務効率の向上を図ることが人件費削減のポイントとなります。例えば、複数現場を担当する兼任体制の導入や、定期作業の外注化などが効果的です。
また、採用から教育までのプロセスにかかる費用も見逃せません。特に離職率が高い業界であるため、再雇用や研修コストが無駄にならないよう、定着率向上のための施策を導入することが重要です。
一方で、無理なコスト削減はスタッフのモチベーション低下や品質低下につながります。よって、人件費管理においては「質と効率のバランス」を見極めることが不可欠でございます。
人件費の内訳を細分化し、定期的に見直すことで、経営判断の精度を高めることが可能となります。
資機材・備品費の内訳と削減ポイント
ビルメンテナンス業務には多くの資機材や備品が必要です。代表的なものとしては、清掃用具、洗剤、ワックス、消耗品、各種工具、点検機器などが挙げられます。
これらの資材費は日々の業務に直結するため、欠かすことはできませんが、仕入れ先や購買方法によってコストの差が大きくなります。
たとえば、同一メーカーの製品でも、複数の流通経路を比較することで価格の最適化が可能です。また、年間契約やまとめ買いなどでのボリュームディスカウントも有効な手段です。
備品類についても、無駄な在庫や使用頻度の低い物品を見直すことが、経費の適正化につながります。定期的な棚卸しと現場ヒアリングを通じて、実際に使用されている物品との乖離を確認すべきです。
また、清掃機器や資材においては、耐久性・コストパフォーマンス・メンテナンス頻度などを総合的に判断することが重要となります。
近年では環境配慮型の洗剤や省エネ型の清掃機器も登場しており、導入コストは高くても、ランニングコストが低いため中長期的なコスト削減につながるケースも増えています。
外注費・協力会社への支払いが発生するケースとは
中小のビルメンテナンス会社では、すべての作業を自社スタッフで対応するのは難しく、部分的に外注や協力会社に依頼するケースが多く見受けられます。
この外注費もビルメンテナンス会社の経費の一部として計上され、契約内容や単価設定によって大きな差が出る項目です。
したがって、複数業者からの見積もり取得や、業務品質の比較を通じて、最適な委託先を選定する必要がございます。
また、定期的な委託内容の見直しを行うことで、作業重複の排除やコスト削減が実現できます。
とはいえ、安易に価格だけで選ぶと、品質低下やトラブルの原因になる可能性があります。業者の信頼性・実績・対応力なども評価軸に含めることが肝要です。
設備更新・修繕費の計画的な管理方法
ビルメンテナンス会社の業務では、設備の点検や修繕が欠かせません。空調、照明、給排水、電気設備などの維持管理には、定期的な点検とともに、予期せぬ故障への対応も求められます。
こうした設備関連の費用は、突発的に発生することが多く、予算の見積もりが難しいという課題があります。そこで重要となるのが「計画的修繕費の積立」です。
例えば、国土交通省の「建築物維持保全マニュアル」では、建物ごとの耐用年数や劣化速度に応じた更新サイクルの考え方が提示されており、これを参考に年間計画を立てることが有効です。
日常点検を通じて異常を早期発見し、軽微なうちに修繕対応することで、大規模な故障や高額な修理費を防ぐことができます。
また、長期修繕計画を作成することで、数年単位での資金繰り計画が立てやすくなります。特に中小規模のビルメンテナンス会社では、資金力に余裕がない場合も多いため、計画性が非常に重要となります。
現場からの報告体制や保守履歴の管理をデジタル化することで、設備ごとの修繕履歴と費用の見える化も進み、経営判断がしやすくなります。
車両・移動費に関する経費の見直し術
ビルメンテナンス業では、現場間の移動が多く発生するため、車両費や交通費も無視できない経費項目の一つです。
まず注目すべきは、自社保有車両の台数と稼働状況です。車検、燃料費、保険料、メンテナンス費用などを考慮すると、使用頻度の低い車両はむしろコスト過多となることがあります。
そのため、稼働実績をデータ化し、使用率の低い車両を減らす、またはカーシェアやリース車両への切替えも検討すべきです。
加えて、現場の訪問ルートや順番を工夫することも、移動時間と燃料費の削減につながります。ルート最適化ソフトや地図アプリを活用し、無駄な移動を減らす取り組みは費用対効果が高いといえます。
公共交通機関を活用するケースでも、交通費の定期券利用やICカードの一括管理による経費の可視化が有効です。
このように、移動手段やルート管理を工夫することで、日常業務の負担を軽減しながら経費の最適化を図ることが可能となります。
保険・安全対策費はどれくらい必要か?
ビルメンテナンス会社では、作業中の事故やトラブルに備えて、各種保険に加入することが常識となっています。たとえば、労災保険や施設賠償責任保険などが代表的です。
これらの保険は万一の事態に備えるものであり、費用をかけたくないと思っても、最低限のリスクヘッジとしての経費と位置づける必要があります。
また、事故そのものを未然に防ぐための安全教育や装備品への投資も重要です。たとえば、安全靴・ヘルメット・高所作業用の命綱など、現場に応じた対策は欠かせません。
さらに、年1回の安全講習や、マニュアルの改訂、ヒヤリハット報告制度などを通じて、社員の意識向上とともに事故発生リスクを低減することが可能です。
こうした安全対策費は一見すると間接的な経費に見えますが、事故による損失や信用低下を防ぐ「予防的な費用」として極めて重要です。
管理部門の間接経費をどう捉えるべきか
ビルメンテナンス会社では、現場作業が目に見えやすいため、直接経費ばかりに意識が向きがちです。しかし、経理・総務・営業などの間接部門にも多くの経費がかかっています。
例えば、事務所の賃料、通信費、事務用品費、事務職員の給与、パソコンやソフトウェアの更新費などが該当します。
これらは日々の現場に直接関与していないものの、企業経営に不可欠な機能であるため、無駄が発生しやすい領域でもあります。
そのため、各間接部門の業務量と成果を定期的に確認し、適正な人員配置や業務効率化を進めることが必要です。
また、クラウド会計や給与計算ソフトの導入などにより、間接部門の業務を効率化することで、間接経費の削減にもつながります。
経費削減と品質維持を両立させるには?
ビルメンテナンス業界では、「コスト削減=品質低下」と誤解されがちですが、実際には両立可能な領域も多く存在します。
たとえば、業務の標準化やマニュアル化によって、作業品質のバラつきを抑えながら業務時間を短縮することができます。
また、ICT機器やIoTセンサーを活用し、点検業務の自動化や異常検知の効率化を行うことで、人件費の削減と品質管理の強化が両立できます。
一方で、無理な単価交渉や人員削減は、顧客満足度の低下や離職リスクを高めてしまう恐れがあります。コストダウンの目的は、あくまでも持続的な利益確保のためであるべきです。
コスト削減を実施する際は、「顧客視点」「従業員視点」「業務視点」の3方向から慎重に検討することが重要となります。
中小ビルメンテナンス企業が利益を確保するには?
中小規模のビルメンテナンス会社が継続的に利益を確保するには、「コスト構造の見える化」と「収益性の高い案件の選別」がカギを握ります。
まず、各経費項目を部門別・現場別・月別などで細かく分析することで、経営判断の材料が増えます。
また、すべての業務を受けるのではなく、自社の得意分野や地域性を活かした戦略的な営業を展開することも重要です。
利益率の低い案件ばかりでは、いくら稼働しても経営は苦しくなります。案件の単価・内容・顧客属性を分析し、長期的な視点での選別が必要となります。
さらに、業務品質を高めて「選ばれる会社」になることで、価格競争から脱却しやすくなり、結果的に利益の安定にもつながります。
結論・まとめ
本記事では、中小規模のビルメンテナンス会社が直面する費用や経費構造について、11の視点から詳しく解説してまいりました。
とくに人件費・資機材費・外注費・間接経費などは、経営の収益性に大きく影響を与える要素です。それぞれの費用項目に対して「見える化」「標準化」「最適化」を図ることが、健全な経営の第一歩といえるでしょう。
また、単なるコストカットではなく、品質維持や従業員満足との両立を意識することで、持続可能な企業成長を実現できます。
今後も業界全体の構造が変化していくなかで、常に自社の経費構造と経営戦略を柔軟に見直す姿勢が求められます。
【船井総研】警備業・ビルメンテナンス業経営の無料個別相談サービス
私たち船井総研警備ビルメンテナンス経営研究会では、警備業・ビルメンテナンス業経営などの業種・業態に特化した専門的なコンサルティングサービスを提供しています。このような変化の激しい時代の中で、様々なサポートをしていきたいと考え、日々コンサルティングを実施させていただいております。それに際し無料個別相談のお申し込みを受け付けしております。この機会にぜひ下記詳細をご確認くださいませ。
警備業・ビルメンテナンス業経営・採用などに関する無料個別相談サービスはこちらから
ビルメンテナンス業界の関連記事
ビルメンテナンス業界の関連記事は下記をご覧ください。
中堅・中小規模のビルメンテナンス会社の仕事・業務内容とは?
ビルメンテナンス業界の市場規模と2024年までの業界動向の振り返り
中小規模のビルメンテナンス会社が推進すべきDXの全貌とは?
ビルメンテナンス業界で求められるスキル・能力とは?
【ビルメンテナンス会社・業務のデジタル化手法!】企業の持続的成長を実現するためには?
中小規模のビルメンテナンス会社にて生じるコスト・経費とは?考慮しておくべきポイント
警備業・ビルメンテナンス業の最新時流、経営ノウハウが満載の無料メールマガジン
株式会社船井総合研究所(船井総研)セキュリティー・メンテナンスグループでは、「警備スタッフ・ビルメンテナンススタッフの人材採用・人材募集」、「(新規事業としての)警備業の立ち上げ」など、警備業・ビルメンテナンス業の経営全般の最新情報をお伝えしております。
日々のコンサルティング活動の中での成功事例や、時流の変化、戦略論など、現場主義を大切にした最新コンサルティングノウハウを随時発信していきます!この機会にぜひご登録くださいませ。