株式会社船井総合研究所(船井総研)警備ビルメンテナンス経営研究会です。2025年上半期、施設警備業界では人材不足や顧客ニーズの多様化、デジタル技術導入の進展など大きな変化が見られました。本コラムでは、施設警備を展開する中小企業の経営者・幹部・人事担当者に向けて、2025年前半の業界動向や課題、対応策を網羅的に振り返るとともに、今後の経営・人材戦略の方向性を丁寧に解説いたします。

2025年上半期の施設警備業界全体の動き
2025年上半期の施設警備業界は、依然として高い需要を維持しておりました。
特に大型商業施設や官公庁系施設、教育機関などにおける警備業務のニーズが安定して推移しました。
一方で、業界全体としては慢性的な人材不足に直面しており、供給体制に課題を抱えております。
新型感染症の影響が緩和される中、都市部を中心に人流が回復したことも、警備需要に拍車をかけました。
この傾向により、施設警備業務の安定性が再評価される動きも強まっております。
また、施設側からの警備レベル向上要求も増加し、業務品質がより重視される傾向となっております。
その一方で、警備料金の見直し交渉が難航するケースも目立ちました。
中小の施設警備会社にとっては、利益率の維持が経営課題として浮き彫りとなっております。
このような状況下において、業界全体の競争力や収益力の強化が求められております。
施設警備業界は今後も安定した需要が期待される一方で、人材、コスト、品質のバランスがより重要になります。
こうした要素を総合的に捉えた経営判断が、今後の持続的成長の鍵を握ってまいります。
中小施設警備会社における経営課題の顕在化
2025年上半期、特に中小規模の施設警備会社において、経営課題が顕著化いたしました。
最大の要因は、人材不足と賃金上昇による人件費の増加にあります。
労働集約型産業である施設警備業において、人件費の高騰は直接的な経営圧迫につながっております。
さらに、顧客からのコスト削減要求との板挟みとなる場面も多く、経営判断が複雑化しております。
多くの中小企業では、現場の維持に注力するあまり、営業や採用、人材育成といった中長期的な投資が後回しとなっております。
結果として、慢性的な人材不足や品質低下といった負の連鎖を招くことになります。
また、受注案件の集中化により、特定顧客依存が進む傾向も見受けられました。
この構造は、契約の急な終了や価格改定の際に、企業全体への影響を大きくしてしまいます。
経営の多角化やリスクヘッジの視点が今まで以上に重要となっております。
経営幹部が現場業務と兼任しているケースも多く、経営戦略の立案やPDCAの実行に時間を割けないという実情もございます。
こうした課題に対処するには、組織の再編や業務分担の見直し、外部支援の活用も選択肢として検討すべきでございます。
顧客ニーズの変化とサービス内容の再設計
2025年上半期において、施設警備業界の顧客ニーズには大きな変化が生じました。
従来型の「巡回と監視」だけではなく、「接遇力」や「状況対応力」を備えた警備員が求められるようになっております。
特に商業施設や医療施設では、来訪者対応や緊急対応のレベルが問われる場面が増加しております。
その結果、施設警備の業務内容も複雑化し、多様なスキルを求められるようになりました。
また、24時間対応の施設では、夜間の安心感やトラブル対応力も評価対象となっております。
警備会社には、単なるマンパワー提供ではなく、「安心を設計するプロ」としての姿勢が求められております。
一方で、施設側のコスト削減圧力も強まっており、単価交渉や業務効率の見直しも不可欠となっております。
そのため、施設警備会社には、コストと品質を両立させる工夫が求められています。
サービス内容の差別化、契約内容の見直し、業務時間帯や人員構成の再設計など、柔軟な対応力が重要になります。
経営者は、顧客ニーズを正しく把握し、的確な提案ができる体制を整える必要がございます。

人手不足が深刻化する現場の実態
2025年も、施設警備業界における人手不足は依然として深刻な問題でございました。
特に中小施設警備会社においては、応募者数の減少と離職率の上昇が同時に進行しております。
人材が確保できず、既存スタッフに過剰な負担がかかることにより、モチベーションの低下が起きております。
その結果、さらなる離職を招き、人員補充が間に合わないという悪循環に陥っている企業も見受けられます。
業務内容の厳しさや勤務時間の不規則性、賃金水準の問題などが、人材確保を阻む要因となっております。
また、若年層の敬遠傾向も顕著であり、構造的な人材難が続いております。
中には、業務の一部をアウトソーシングすることで対処する企業もありますが、警備業務の性質上、完全な外部委託は難しい状況です。
そのため、自社内での働き方改革や職場環境の整備が急務となっております。
若年層・中高年層の採用状況とその傾向
施設警備業界では、若年層から中高年層まで幅広い年齢層が働いております。
しかし、2025年上半期の採用傾向を見ると、若年層の確保はますます困難になっております。
主な理由として、労働環境や賃金に対する期待値と実情のギャップが挙げられます。
若者層は安定志向が強く、キャリアパスや職場環境に対する関心も高まっております。
一方で、中高年層や定年後の再雇用人材は比較的安定して採用できております。
彼らは業務に対して真摯に取り組み、職場の安定化にも寄与している存在です。
したがって、施設警備業務においては、中高年層の活用を前提とした業務設計が重要となっております。
体力面への配慮や、柔軟な勤務形態の導入などが定着率向上の鍵となってまいります。
外国人材の受け入れと施設警備への影響
外国人材の活用は、施設警備業界における新たな人材戦略として注目されております。
2025年上半期には、技能実習制度や特定技能制度を通じて、外国人警備スタッフの受け入れ事例が増えてきました。
特に、夜間勤務や単純警備業務を担うスタッフとして、一定の成果が見られました。
言語・文化の壁は存在するものの、教育制度の整備により徐々に現場への適応も進んでおります。
ただし、施設警備という業務の性質上、高い日本語能力や緊急時対応能力が求められます。
そのため、安易な外国人材の採用はリスクを伴い、慎重な検討が必要となっております。
中長期的には、教育制度やフォロー体制の整備により、外国人材の戦力化が可能になると考えられます。
施設警備業務の一部領域においては、有力な人材ソースとして期待されております。

教育・研修体制の見直しと育成強化の動き
2025年の施設警備業界では、教育・研修体制の強化が各社で進んでおります。
新任教育・現任教育ともに、形式的ではない「実務に即した研修」が重視されるようになりました。
従来の紙資料中心の研修から、動画教材やeラーニングの活用にシフトする企業も増えております。
これにより、学習の均一化や理解度の向上が期待されています。
さらに、現場リーダー層に対するマネジメント研修や、コミュニケーション研修の実施も増加しております。
顧客対応やチーム運営の質を高めるためには、リーダー人材の育成が不可欠だからです。
教育を単なる義務とせず、「人材投資」として捉える企業ほど、離職率の低下や業績の安定化に成功しております。
施設警備の業務内容が複雑化する今だからこそ、教育の質が企業の競争力を左右しております。
デジタル技術の導入による業務効率化
近年、施設警備業界でもデジタル技術の導入が進みつつあります。
2025年上半期には、特に中堅以上の警備会社を中心に、DX推進が本格化しました。
例えば、顔認証システムやICカードによる入退管理の導入が進んでおります。
これにより、警備員による確認作業の負担軽減と、ミスの削減が実現しております。
また、AIカメラや自動巡回ロボットを活用することで、省人化と夜間警備の強化が図られました。
一部の商業施設では、夜間の警備業務の一部をロボットに置き換える事例も見られました。
中小企業においては、コスト面の制約が課題となりますが、助成金やリース活用で導入を進める動きも増えております。
まずは「アナログ管理の可視化」からスタートし、段階的なデジタル化を進めることが現実的でございます。
警備業務のデジタル化は、労働力不足対策のみならず、業務品質向上にもつながる重要な戦略となっております。
警備品質と業績の関係性に注目する動き
2025年上半期の動向からは、「警備品質=顧客満足=業績向上」という関係性がより明確になっております。
単に現場を巡回するだけの警備から、価値提供型の警備業務への転換が求められております。
たとえば、トラブル対応時の初動対応力や、顧客との信頼関係を築く接遇姿勢などが、顧客の再契約・契約延長に直結しております。
そのため、現場教育の強化や業務マニュアルの整備が注目されております。
また、施設警備員の報告スキルや観察力の向上により、防犯精度が高まり、施設管理者からの評価も向上する傾向にございます。
これらの要素が結果的に契約単価の維持や増額交渉を成功させる土台となっております。
業績を上げるためには、営業強化だけでなく、「現場の質をどう磨くか」が経営課題として重要視されております。
価格競争を脱するための営業・契約戦略
施設警備業界は、依然として価格競争にさらされる場面が多く存在しております。
しかし2025年には、その流れに変化が見られました。
価格だけで勝負せず、「業務品質」「対応力」「安全提案力」といった非価格要素での差別化を図る企業が増加しました。
たとえば、警備リスク診断サービスや、契約先施設向け安全セミナーの提供などが例として挙げられます。
こうした付加価値型の営業戦略により、単価を守りつつ長期契約につなげる事例が増えております。
特に中小施設警備会社においては、既存顧客の囲い込みと紹介案件の創出が鍵となります。
契約更新時には、単なる更新ではなく「改善提案型」の資料を提示することで、信頼性と専門性をアピールできます。
営業と現場が連携し、現場の努力が営業成果につながる体制づくりが求められております。

地域密着型警備とコミュニティ連携の強化
2025年上半期には、地域密着型の警備サービスに注目が集まりました。
特に自治体や地域住民と連携した活動が、社会貢献とブランディングの両立につながっております。
たとえば、防犯パトロールの共同実施や、地域イベントでの警備支援などが挙げられます。
これにより、企業の信頼度向上や認知度アップに成功する事例も出ております。
また、地域の防犯情報を収集し、顧客施設にフィードバックすることで、施設警備業務の質も向上します。
地域住民との関係性が深まることで、警備員への通報・相談の頻度も高まり、治安維持にも貢献できます。
中小企業にとっては、地元での存在感を高める施策として、地域連携は極めて有効な手段でございます。
今後の施設警備業界で注目すべきトレンド
今後の施設警備業界では、以下のようなトレンドが注目されております。
-
遠隔監視やAI活用の拡大:デジタル技術との連携による効率化が進展します。
-
高齢人材の再活用:60代以上の戦力化と再教育が加速します。
-
警備サービスの「複合化」:施設管理や受付業務との一体型サービスの需要が増加します。
-
BCP対応型警備:災害・感染症時の対応スキルが新たな評価軸になります。
-
SDGsやESG対応の強化:環境・社会貢献に寄与する警備会社が評価される流れです。
これらの潮流を押さえた経営戦略の立案が、今後の競争優位性を左右する要因となります。
経営者・幹部が描くべき中長期ビジョンとは?
中小の施設警備会社が今後描くべき中長期のビジョンには、3つの柱が必要です。
-
「人材の質」を高める教育戦略
-
「業務の質」を高める現場力強化
-
「経営の質」を高める戦略的思考
目先の契約に一喜一憂するのではなく、将来を見据えて組織体制を整えることが不可欠です。
また、幹部や現場責任者が経営視点を持てるような育成方針が、企業の持続的発展を支える原動力になります。
地域や顧客から信頼される「施設警備会社」を築くために、経営層が一貫した価値観と戦略を持つことが重要です。

結論・まとめ
2025年上半期、施設警備業界はさまざまな課題と可能性に直面しておりました。
特に中小企業においては、人材難やコスト圧力といった構造的な課題が浮き彫りになっております。
一方で、教育や技術活用、女性や外国人の登用といった新たな取り組みも広がりを見せております。
これらをどう経営に取り込み、自社の強みに変えていけるかが、今後の成長のカギでございます。
施設警備という社会インフラを担う業務だからこそ、確かな品質と信頼性が問われます。
そのためには、経営陣が現場と向き合い、中長期的な視野で改革を進める必要がございます。
本コラムが、施設警備業を展開する中小企業の経営者・幹部・人事担当者の皆さまにとって、
今後の戦略立案と事業運営の一助となれば幸いでございます。
【船井総研】警備業・ビルメンテナンス業経営の無料個別相談サービス
私たち船井総研警備ビルメンテナンス経営研究会では、警備業・ビルメンテナンス業経営などの業種・業態に特化した専門的なコンサルティングサービスを提供しています。このような変化の激しい時代の中で、様々なサポートをしていきたいと考え、日々コンサルティングを実施させていただいております。それに際し無料個別相談のお申し込みを受け付けしております。この機会にぜひ下記詳細をご確認くださいませ。
警備業・ビルメンテナンス業経営・採用などに関する無料個別相談サービスはこちらから
施設警備業の関連記事
本コラムの関連記事は下記をご覧くださいませ。
【中小規模の施設警備会社向け】望ましい電話対応の手法を解説
【施設警備会社の今後の経営手法!】企業の成長や採用強化に必要なこと
【施設警備会社で発生する費用・コストとは?】最適化する方法も含めて解説!
施設警備会社・業務のデジタル化手法!企業の持続的成長を実現するためには?
施設警備会社の「管制管理業務」のポイントと注意すべきこと
施設警備会社の巡回要領とは?人手不足の中でも現場を回す方法

警備業・ビルメンテナンス業の最新時流、経営ノウハウが満載の無料メールマガジン
株式会社船井総合研究所(船井総研)セキュリティー・メンテナンスグループでは、「警備スタッフ・ビルメンテナンススタッフの人材採用・人材募集」、「(新規事業としての)警備業の立ち上げ」など、警備業・ビルメンテナンス業の経営全般の最新情報をお伝えしております。
日々のコンサルティング活動の中での成功事例や、時流の変化、戦略論など、現場主義を大切にした最新コンサルティングノウハウを随時発信していきます!この機会にぜひご登録くださいませ。