株式会社船井総合研究所(船井総研)警備ビルメンテナンス経営研究会です。本コラム記事では、2号警備会社を経営する中小企業の経営者・幹部に向けて、高齢化が進む中で持続的な経営を実現するための人材戦略を徹底解説します。人材確保や教育、安全配慮など実務的な視点から紹介します。
高齢化社会と警備業界の現状とは?
日本では急速な高齢化が進行しており、総務省のデータによると65歳以上の人口は約29%に達しています。これは先進国の中でも最も高い比率であり、労働市場にも大きな影響を与えています。
特に2号警備会社が多く展開する交通誘導警備業界では、人材の高齢化が顕著です。若年層の応募が少なく、60歳以上の警備員が主力を占める企業も増加傾向にあります。
一方で、交通誘導警備の仕事は屋外での業務が中心となるため、体力・集中力・安全意識の維持が不可欠です。したがって、高齢化は人材戦略上の大きな経営課題となっています。
また、2号警備会社は建設現場やイベント、道路工事などに対応するため、即戦力となる人材の確保が急務です。その一方で、採用や教育に多くのコストがかかる現状も無視できません。
そのため、高齢化を前提とした新たな経営方針と人材育成体制の構築が求められています。業界全体としても、今後10年で大幅な構造転換が起きる可能性が高まっています。
警備会社が地域社会に貢献しながら、持続可能な経営を目指すには、高齢化を前提とした人材戦略の立案が不可欠です。
中小企業の経営者は、目先の人手確保だけでなく、将来を見据えた体制強化を検討する必要があります。
そこで本稿では、警備業界における高齢化の影響と、それに対応する具体的な人材戦略を段階的にご紹介いたします。
高齢化が進む警備員人材の実態と課題
現在、全国の2号警備会社において、登録警備員の年齢構成比を確認すると60歳以上が約4割を占めています。これは他業界に比べてもかなり高い割合です。
背景には、シニア層の再就職先として警備業が選ばれていることが挙げられます。年金だけでは生活が成り立たず、比較的未経験でも就業できる警備業に人気が集まっている状況です。
しかし、その一方で課題も顕在化しています。第一に、体力の低下や反応速度の鈍化による業務リスクの増加です。交通誘導警備の現場では迅速な対応が求められる場面も多く、年齢による限界が現れやすくなっています。
第二に、熱中症や持病の悪化など、健康リスクへの対応です。特に夏場の業務では命に関わるケースもあり、現場管理者の健康配慮が経営責任の一部となりつつあります。
また、知識の更新が追いつかず、交通規制基準の改定に対応できないなどの知識的な遅れも問題視されています。
さらに、ITやデジタル機器に対する抵抗感が強く、デジタルシフトの障壁になるケースも少なくありません。
そのため、年齢に応じた業務配置や、教育内容のカスタマイズ、健康支援策の充実など、多面的な人材マネジメントが求められます。
経営者はこうした現場の声を吸い上げ、制度やルールの見直しを通じて対応していく姿勢が重要です。
中小警備会社が直面する人手不足の深刻化
警備業界は慢性的な人手不足に直面しています。特に中小規模の2号警備会社においては、大手企業との人材獲得競争に苦しんでいるのが現実です。
建設業界からの発注は増加傾向にあり、交通誘導警備のニーズは拡大しています。しかし、必要な警備員数を確保できず、業務を受注できないという声も多く聞かれます。
採用活動においても、求人広告の反響が少なく、面接辞退や内定辞退が常態化している企業もあります。加えて、若年層からは警備職のイメージが敬遠されがちです。
このような中で、比較的応募の多い高齢者層に依存する傾向が強まっています。結果的に、年齢層の偏りが進行し、組織全体の柔軟性が低下するという悪循環が起きています。
また、人員配置が常にギリギリの状態であるため、急な欠勤や退職があると現場対応が困難になります。経営者にとっては、日々の現場運用そのものが綱渡りとなっています。
こうした状況を改善するためには、人材確保の仕組みを根本から見直す必要があります。採用チャネルの多様化や、待遇改善、ブランディング戦略の導入が求められます。
また、定着率の向上も重要な指標となります。教育体制や評価制度を整えることで、人材の流出を防ぎ、安定した現場運用が可能になります。
高齢者人材を活かす警備業の人材戦略とは?
2号警備会社において、高齢者人材の活用は避けて通れないテーマです。しかし、単に人数合わせとして採用するのではなく、戦略的に位置づけることが重要です。
第一に、年齢に応じた業務配分を行うことが効果的です。たとえば、危険度の低い現場や、通行量の少ないエリアに配置することで安全性を確保できます。
第二に、経験豊富な高齢者を「現場教育担当」として活用する方法があります。若手や未経験者への指導役として機能すれば、教育コストの削減にもつながります。
第三に、雇用条件や勤務形態を柔軟に設計することが求められます。週2~3日の勤務や午前のみのシフトなど、個別最適化された働き方の導入が定着率の向上に貢献します。
さらに、健康状態や能力に応じて業務内容を細分化し、適材適所の配置を行うことも必要です。単純な年齢区分ではなく、実際のコンディションを踏まえた判断が求められます。
また、業務マニュアルや誘導手順をわかりやすく整理し、高齢者でも理解しやすい教育資料を用意することが効果的です。
このような取り組みにより、高齢者人材を単なる労働力としてではなく、「戦力」として再定義できます。
企業文化としても、多世代共存の意識を育てることが、持続的な警備会社経営の鍵を握ります。
定年延長・再雇用制度の見直しポイント
2号警備会社における人材戦略として、定年制度や再雇用制度の見直しは不可欠な課題です。特に中小企業では、制度が形骸化しているケースも少なくありません。
近年の高齢者雇用安定法の改正により、企業には65歳までの継続雇用が義務化されました。さらに、70歳までの就業機会確保が努力義務とされています。
これにより、警備会社でも定年後も働き続ける人材が増加しています。しかし、現場の体力的な負担や、指導教育体制が十分でないまま再雇用が行われると、現場に混乱が生じることもあります。
定年延長を制度化する際には、以下のような観点から制度を設計することが重要です。
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再雇用条件の明文化:給与・勤務日数・評価基準を明示し、双方が納得できる形に整備します。
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職務内容の再設計:年齢や健康状態に応じた安全な業務に配属し、役割分担を明確にします。
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キャリア面談の実施:本人の意欲や将来像を確認する定期的な面談を通じて、モチベーションの維持を図ります。
また、再雇用された高齢者が若手の指導役や業務補助に回ることで、世代間の橋渡し役としての機能も期待できます。
このように、定年延長は単なる年齢の引き上げではなく、組織の戦力構造を再構築する重要な施策として位置づけるべきです。
若年層・中高年層の採用バランスの最適化
警備会社の経営を安定させるためには、年齢層のバランスを考慮した採用戦略が重要です。高齢者に偏った人材構成は、緊急対応や現場変化への柔軟性を損なう恐れがあります。
まず、若年層に対しては、警備業界のイメージ改善と働きがいの訴求が鍵となります。SNS活用やWeb動画を活用した企業PRは、20代~30代層への接点づくりに有効です。
一方で、中高年層に対しては「安定した収入」「社会貢献意識」「柔軟な勤務」が刺さりやすいポイントです。求人内容も年齢層ごとに訴求ポイントを変えるべきです。
また、採用段階から健康チェックや業務適性の評価を行うことで、ミスマッチのリスクを減らすことができます。
さらに、異なる年齢層が協力して働ける体制を整えるために、現場リーダーやサブリーダーの配置を強化し、年齢差によるギャップの調整を図ることが有効です。
このような多様性を前提とした組織作りは、2号警備会社における持続可能な経営の基盤となります。
警備業務に必要なスキルと教育体制の再構築
警備業務は単純労働と思われがちですが、実際には多くのスキルと判断力が求められる業務です。特に交通誘導警備では、交通状況や現場の危険要因を瞬時に判断し、適切に誘導する力が必要です。
また、法律知識、コミュニケーション力、トラブル対応力など、ソフトスキルの育成も重要です。
そのため、教育体制の再構築が不可欠です。警備業法に基づく新任教育・現任教育に加えて、現場実務に即したOJTの充実が求められます。
特に高齢者や未経験者に対しては、視覚的に理解できる教材(図解、動画)や、実地訓練を取り入れることが効果的です。
また、定期的なフォローアップ教育を通じて、スキルの定着とアップデートを促進する体制が求められます。
経営者としては、教育コストを単なる「費用」と捉えるのではなく、「将来の投資」として位置づけ、戦略的に設計することが重要です。
健康管理・安全配慮が求められる高齢警備員対策
高齢の警備員が増加する中で、健康管理と安全配慮は経営上の重要課題です。特に屋外業務が多い交通誘導警備では、熱中症・転倒・体調不良などのリスクが高まります。
健康管理のためには、定期健康診断の実施だけでなく、日々の体調チェック体制の強化が求められます。現場リーダーが声かけを行う習慣を作ることで、早期発見・対応が可能になります。
また、勤務時間の短縮や連勤制限、休憩所の整備など、労働環境の工夫も不可欠です。特に夏季・冬季には、気候に合わせた業務調整が必要です。
さらに、現場で使用する資機材(誘導棒・ベスト・ヘルメット等)を軽量化し、負担軽減を図る工夫も効果的です。
加えて、健康意識を高めるための研修や、産業医のアドバイス体制を導入する企業も増えています。
このように、経営者としては「安全に働ける環境づくり」そのものを人材戦略と結びつけて考えることが重要です。
他業種との連携による人材確保の新たな視点
中小の2号警備会社にとって、単独での採用活動には限界があります。そのため、他業種と連携した人材確保の取り組みが注目されています。
たとえば、物流業や清掃業と連携し、閑散期に警備業務を兼任してもらうなどの取り組みが始まっています。これにより、互いに人材不足を補完する効果が期待できます。
また、地域の職業訓練校やハローワークと協力し、研修付き就職支援を実施することで、未経験者の就業率を高めることも可能です。
最近では、自治体と連携し「高齢者の地域就労支援」として警備業務を紹介する事例も増えており、地域社会との結びつきが強化されています。
このように、他業種や行政とのパートナーシップは、警備業界にとっても大きな成長機会となります。経営者は、社外との接点づくりに積極的に動くことが求められます。
高齢化時代における持続可能な警備会社経営とは
高齢化が進む日本において、2号警備会社が今後も地域に根ざした経営を続けるためには、持続可能な仕組みづくりが求められます。
まず重要なのは、「人材確保」だけでなく「人材活用」へと発想を転換することです。高齢者人材を「制約」ではなく「資源」として捉える姿勢が求められます。
また、採用・教育・健康管理・雇用制度を一体として運用する「人材戦略の統合」が必要です。バラバラに施策を打つのではなく、長期ビジョンに基づいた設計が成功の鍵となります。
デジタル技術の導入や、情報共有の効率化も、少人数経営の中小警備会社にとっては大きな武器になります。
さらに、企業文化として「年齢に関係なく活躍できる職場づくり」が定着すれば、自然と定着率も向上し、現場の安定性も増していきます。
結論・まとめ
本稿では、2号警備会社を経営する中小企業の経営者・幹部の皆さまに向けて、高齢化社会における人材戦略の重要性とその具体策をご紹介してまいりました。
高齢者の活用は、単なる代替労働力ではなく、組織の知恵や経験を次世代につなぐ「資産」として捉えるべきです。
また、採用から教育、健康配慮、制度設計まで一体で取り組むことで、持続的な警備会社経営が実現できます。
高齢化は避けられない社会の流れであり、それに柔軟に対応することが、これからの警備業界に求められる最大の経営力です。
ぜひ、御社の現状と照らし合わせながら、戦略的な人材マネジメントの再構築を進めていただければ幸いです。
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