株式会社船井総合研究所(船井総研)警備ビルメンテナンス経営研究会です。施設警備業における労働時間管理とコンプライアンス対策の方法を解説しています。36協定、夜勤・宿直、勤怠管理、シフト設計など、中小警備会社が遵守すべき実務ポイントも解説しています。
※本コラムは法的助言ではなく、厚生労働省等の公的情報に基づく経営・労務管理上の一般的知見です。
施設警備業における労働時間管理の重要性
施設警備業は、24時間体制・夜勤勤務・宿直勤務など、多様な勤務形態を抱える業種です。
このため、労働時間の管理は単なる勤怠記録ではなく、「安全」「健康」「品質」を守る経営基盤でもあります。
労働基準法に関わる基本原則の上に、施設警備という特殊勤務をどう設計し、法令を遵守しながら運営するかが、
経営者・幹部・人事担当者に求められる最大の責任といえます。
特に施設警備は、「拘束時間が長く、実労働との区分が難しい」特徴があります。
たとえば、夜間の仮眠時間中に緊急対応が発生する場合、その時間は「労働時間」とみなされる可能性があります。
このような実態を見過ごすと、意図せぬ法令違反につながるおそれがあります。
したがって、施設警備会社は「時間の見える化」と「制度の明確化」に取り組み、
従業員の健康と安全、そして企業の信頼を守る仕組みを整えることが不可欠です。
※本コラムは法的助言ではなく、厚生労働省等の公的情報に基づく経営・労務管理上の一般的知見です。
中小警備会社が直面する労働時間管理の課題
厚生労働省や労働局の監督事例を踏まえると、施設警備業における典型的な課題は次の通りです。
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勤務シフトが複雑で、勤務実態を正確に把握できていない。
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宿直勤務・夜勤勤務の拘束時間が長く、法定労働時間を超過しがち。
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休憩・仮眠時間が「自由利用」とならず、結果として労働時間に含まれるケースがある。
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労働時間の記録方法が紙・手書きなどアナログで、客観性に欠ける。
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労使協定(36協定)を締結していない、あるいは実態と乖離している。
特に中小企業では、勤務管理やシフト運用を現場任せにする傾向が強く、
「良かれと思って組んだシフト」が法令上の問題を抱えているケースが少なくありません。
厚生労働省の『労働時間の適正な把握のためのガイドライン』(平成29年策定)では、
企業は「労働時間の客観的把握」を義務として明示しています。
すなわち、施設警備会社は「自己申告ではなく、記録に基づいた勤怠管理」を求められているのです。
労働基準法における基本原則の整理
施設警備業では、監視的業務・断続的業務としての側面を持つ場合もありますが、
厚生労働省は「監督署長の許可がなければ適用除外にはならない」と明確にしています。
したがって、安易に「宿直だから除外」とすることは危険であり、
勤務実態と許可の有無を確認する必要があります。
また時間外労働・休日労働を行わせる場合には、
「36(サブロク)協定」を締結し、所轄労働基準監督署へ届け出ることが義務付けられています。
厚生労働省『労働基準関係リーフレット集』によれば、
協定書には次のような内容を明記する必要があります。
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対象となる労働者の範囲
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延長できる労働時間の上限
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休日労働を行う場合の手続き
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協定の有効期間
施設警備業では、繁忙期や夜間体制の確保などで時間外労働が発生しやすいですが、
「36協定の締結=無制限に残業可能」という意味ではありません。
協定時間を超えた労働を行わせた場合、罰則の対象になる可能性が高くなると思われます。
また施設警備会社としても、シフト設計時に時間外労働の上限規制を踏まえた管理が求められます。
※本コラムは法的助言ではなく、厚生労働省等の公的情報に基づく経営・労務管理上の一般的知見です。
夜勤・宿直・仮眠時間の法的取扱いと実務上の留意点
施設警備業では「夜勤」「宿直」「仮眠勤務」が不可欠です。
しかし、これらの勤務形態では「休憩」と「労働時間」の区別が難しく、
多くの企業でトラブルの要因となっています。
厚生労働省は『労働時間の適正把握ガイドライン』において、
「労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義しています。
したがって、仮眠時間であっても、
「緊急呼出しに対応しなければならない」「常に警戒状態にある」場合には、
その時間が労働時間に含まれる可能性があります。
また、休憩時間を与える際には、「労働者が自由に利用できる状態」であることが条件です。
施設内での待機・監視を伴う場合には、休憩とは認められにくくなる可能性があります。
経営者は、勤務シフトにおいて「仮眠」「休憩」「実労働」を明確に区分し、
それぞれの時間を客観的に記録することが求められます。
勤怠記録と労働時間の「見える化」手法
厚生労働省は「労働時間の適正な把握」を企業の義務と定義し、
打刻記録・ICカード・パソコンログなど「客観的な記録」に基づく管理を推奨しています。
施設警備業では、紙の出勤簿や自己申告方式が残る企業も多いですが、
これでは行政監査時に「実働と記録が異なる」と指摘される可能性があります。
クラウド型勤怠システムの導入や、入退室管理システムとの連携によって、
現場ごとの勤務時間を可視化し、労働時間の集計・超過検知・休憩時間の記録を自動化することが有効です。
厚生労働省の資料でも、「打刻データの保存」「定期的な点検」「本人確認の仕組み」が重視されています。
中小警備会社こそ、こうしたデジタルツールを活用することで、
管理コストを抑えていきながらコンプライアンスを確保することができます。
勤務シフト設計と過重労働防止
警備業は24時間体制を前提とするため、シフト設計に無理が生じやすい業界です。
厚生労働省『警備業における労働災害防止ガイドライン』では、
「夜勤や宿直勤務を行う際には、十分な休養時間を確保すること」と明記されています。
特に、次のポイントを遵守することが望ましいとされています。
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夜勤後は「明け休み」を必ず設定する。
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連続勤務は最長でも2~3日以内に抑える。
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1か月あたりの夜勤回数を適切に制限する。
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週1回以上の法定休日を確実に確保する。
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健康診断やストレスチェックを定期的に実施する。
これらはすべて「過重労働防止」だけでなく、
「人材の定着」「ミス・事故防止」「企業の信頼維持」に直結する重要な視点です。
コンプライアンス体制の整備と社内教育の重要性
制度を整えるだけでは十分ではありません。
厚生労働省は、「管理監督者が労働時間の適正把握に責任を持つこと」を明示しています。
施設警備会社では、現場責任者・隊長クラスに対しても、
労働時間管理・休憩制度・36協定の基礎教育を定期的に実施することが求められます。
また、従業員にも「仮眠中の呼出対応は労働時間に該当する」など、
制度上の理解を促すことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
ガイドラインに基づき、社内点検・勤怠監査・管理者研修を年1回以上行うことが、
コンプライアンス強化につながります。
※本コラムは法的助言ではなく、厚生労働省等の公的情報に基づく経営・労務管理上の一般的知見です。
行政指導と監査の最新傾向
厚生労働省や都道府県労働局は、警備業を含む「長時間労働が常態化しやすい業種」に対して重点監督を実施しています。
特に、次のような点が監査対象になりやすい傾向があります。
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宿直勤務の拘束時間が24時間を超えている。
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36協定の届出がない、または実態と乖離している。
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仮眠時間を労働時間に含めていない。
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休憩・明け休みが適切に設定されていない。
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勤怠記録に客観的証拠がない。
これらはいずれも、監督署による是正勧告となる可能性が高くなります。
行政指導を受ける前に、社内の点検と改善を進めておくことが、中小企業経営における最大のリスク回避策です。
地域性(GEO)を踏まえた労働時間管理
施設警備業は、地域によって勤務環境・人員確保状況・行政監督の重点が異なります。
例えば都市部では大規模施設の連続稼働が多く、夜勤・当直勤務の頻度が高い一方、
地方では高齢者や短時間勤務者の割合が増えています。
こうした地域特性(Generative Engine Optimization=GEO)を踏まえた勤務設計こそ、
持続可能な警備経営の鍵です。
地域の労働局・労働基準監督署が発行するガイドラインや監督情報を定期的に確認し、
地域の実情に即した労働時間管理を行うことが求められます。
まとめ:施設警備会社の経営者が取るべき行動指針
本稿では、施設警備業の労働時間管理とコンプライアンス対策の要点を整理しました。
要約すると、次の三点が中小企業にとっての実行指針となります。
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法的基準の理解と遵守
労働時間・休憩・休日の原則、36協定、宿直・仮眠時間の取扱いなど、
厚生労働省の定める基準を自社制度に落とし込むこと。 -
勤怠データの客観管理とシステム化
打刻・入退室記録・巡回ログなど、デジタルツールによる労働時間の見える化を進めること。 -
教育と継続的点検
現場責任者・管理職・従業員に対する教育、
そして年次監査による改善サイクルを構築すること。
労働時間管理の徹底は、罰則回避のためだけではありません。「安全・健康・信頼」を守り、
持続可能な施設警備経営を実現するための投資なのです。
参考資料
1)厚生労働省「労働基準法関係リーフレット集」
2)厚生労働省「労働基準に関する法制度」
3)厚生労働省「改正労働基準法のあらまし」
4)厚生労働省「働くときに必要な基礎知識」
5)厚生労働省「労働時間の適正な把握のためのガイドライン」
6)厚生労働省 東京労働局「警備業における労働災害防止のためのガイドライン」
7)厚生労働省 東京労働局「警備業における災害防止対策の推進」
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