機械警備業の労働時間管理とコンプライアンス対策法とは?

2025年11月12日配信

カテゴリ:
営業 警備業界

株式会社船井総合研究所(船井総研)警備ビルメンテナンス経営研究会です。機械警備会社において、労働時間管理と法令遵守(コンプライアンス)は経営の基盤です。シフト設計・勤怠把握・長時間抑制など具体的対策を分かりやすく解説し、機械警備業界における持続可能な人材・業務管理のノウハウをご提供します。

※法的解釈・助言ではなく、制度の概要・対策をご紹介しています。

機械警備会社における労働時間管理の意義

機械警備業は、24時間365日体制で社会の安全を支える公共性の高い業務です。しかしその一方で、長時間勤務や待機を含む不規則なシフト構成が多く、労働時間管理の適正化が大きな課題となっています。

近年、厚生労働省による「働き方改革関連法」の施行以降、すべての事業者に対して時間外労働の上限規制や労働時間の把握義務が強化されました。この流れは警備業界も例外ではなく、経営層が自社の勤務実態を正確に把握し、法令遵守を前提に経営管理を行うことが求められています。

適正な労働時間管理は、単なる法令順守の問題にとどまりません。従業員の健康保持、離職防止、生産性向上、さらには顧客からの信頼向上にもつながる、経営の基盤強化策でもあるのです。

機械警備業界特有の勤務形態が抱える課題

機械警備業の特徴は、「常駐勤務」「待機勤務」「出動対応」という多層的な労働形態にあります。この複雑な勤務体系が、労働時間管理の難易度を上げています。

特に問題視されるのは、「待機時間」「仮眠時間」「出動要請時の対応」が労働時間として算入すべきか否かという判断です。厚生労働省の通達では、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」は労働時間に該当するとされています。

つまり、待機中でも現場に拘束され、いつでも出動可能な状態であれば、実質的に労働時間とみなされる可能性があります。この判断を誤ると、未払い残業や労使トラブルにつながるため、経営者は慎重な判断が求められます。

「監視・断続的労働」など特殊勤務の取扱い

機械警備業の勤務形態の中には、「監視又は断続的労働」に該当する場合があります。この場合、労働基準法第41条に基づき、労働時間・休憩・休日の規定の適用除外を受けることが可能です。

ただし、これはあくまで「常態的に軽度な労働」であり、都道府県労働局長の許可が必要です。現場の実態が常時緊張状態にある場合や、頻繁に出動がある場合は、この除外が認められません。

多くの中小警備会社では、この特例を誤って適用し、結果的に未払い賃金が発生するケースが報告されています。したがって、勤務実態を正確に記録し、必要に応じて労働局に相談することが重要です。

勤怠管理を整備するためのガイドライン活用法

労働時間の適正な把握は、企業の義務であると同時に、従業員の健康管理にも直結します。厚生労働省が公表している「労働時間の適正な把握のためのガイドライン」では、使用者が講ずべき措置として以下の項目を明示しています。

  1. 出退勤時刻を正確に把握すること(タイムカード・ICカード・入退室記録など)
  2. 自己申告制を採用する場合は、虚偽申告防止措置を講じること
  3. 管理監督者であっても、健康確保の観点から労働時間を把握すること

これらの仕組みをシステム化することで、紙やExcelによる管理よりも正確性が向上します。特に、警備業のように巡回・待機・出動を繰り返す業務では、勤怠管理のDX推進が効果的です。

※法的解釈・助言ではなく、制度の概要・対策をご紹介しています。

デジタル勤怠・シフト管理システムの導入ポイント

近年、多くの機械警備会社で、クラウド型勤怠管理システムの導入が進んでいます。これにより、現場ごとの打刻データをリアルタイムに集約でき、管理負担が軽減されます。

また、GPS打刻を活用することで、実際の勤務場所・移動経路を自動記録できるため、虚偽打刻や勤怠記入漏れも防止できます。シフト管理においても、AIを用いた自動割当機能を導入すれば、人為的ミスの削減が期待できます。

さらに、労働時間データをもとに長時間勤務者を早期把握し、面談・健康指導の実施につなげることができます。これは厚生労働省が推進する「労働安全衛生法第66条の8の3」に基づく面接指導の考え方にも沿った取り組みです。

過重労働防止と健康管理:行政指針の活かし方

厚生労働省は、「過重労働解消キャンペーン」や「労働時間等設定改善指針」を通じて、過重労働防止策を呼びかけています。特に警備業では、長時間拘束・夜勤の多さ・不規則勤務が健康リスクを高める要因とされています。

企業が取るべき対策としては、

  1. 勤務間インターバル制度の導入
  2. 長時間労働者への医師面談
  3. ストレスチェック制度の活用

などが挙げられます。これらを組み合わせることで、従業員の健康保持と業務効率の両立が可能になります。「働く人の健康確保措置」を重視する姿勢こそが、機械警備会社の信頼経営を支える基盤です。

シフト設計が人材定着・業績に与える影響

シフト設計は、単なる人員配置ではなく、経営戦略の一部として位置づけるべきです。適切なシフト設計によって、従業員のワークライフバランスが向上し、離職率が大幅に改善する事例が多数あります。

厚生労働省の「働き方改革推進支援センター」では、シフト勤務の改善による人材定着事例を公開しています。短時間正社員制度や週休3日制など、柔軟な勤務形態を導入した企業では、採用力の強化にもつながっています。

機械警備会社においても、固定夜勤と日勤の分離・希望シフト制・交代勤務の見直しなどの取り組みが有効です。経営者が「働きやすさ」を経営指標として捉えることが、長期的な業績向上に寄与します。

コンプライアンス体制の構築と運営のコツ

労働時間管理を適正化するためには、社内コンプライアンス体制の明文化が欠かせません。厚生労働省の「企業における労務コンプライアンス向上のための指針」では、経営者の責任として次の項目が求められています。

  1. 法令遵守方針の策定と周知
  2. 労働時間・休暇管理の定期監査
  3. 労使間での相談体制の整備
  4. 内部通報制度の構築

これらを実施する際には、顧問社労士などの専門家と連携し、社内規程・36協定・就業規則を定期的に見直すことが重要です。形式だけの規程ではなく、現場で運用できる仕組みに落とし込むことがポイントです。

持続可能な機械警備経営に向けた総括と展望

今後の機械警備業においては、「人材の確保・育成」と「労務コンプライアンス」が経営の両輪になります。単に法令を守るだけでなく、従業員の安心と健康を守る経営姿勢が、企業価値を高める時代です。

デジタル化による勤務管理の効率化、柔軟なシフト設計、健康経営の推進を組み合わせることで、業界全体の労働環境改善と持続可能な成長が期待できます。

厚生労働省は引き続き、中小企業向けの支援制度(働き方改革推進支援助成金など)を提供しています。経営者はこれらの制度を活用しながら、自社のコンプライアンス体制を定期的に見直し、「働く人にも社会にも選ばれる機械警備会社」を目指すことが求められます。

参考資料

  • 厚生労働省「働き方改革関連法に関する解説資料」
  • 厚生労働省「労働時間の適正な把握のためのガイドライン」
  • 厚生労働省「監視又は断続的労働に関する許可基準」
  • 厚生労働省「過重労働解消のための取組指針」
  • 厚生労働省「企業における労務コンプライアンス向上のための指針」
  • 厚生労働省「働き方改革推進支援助成金の概要」

【船井総研】警備業・ビルメンテナンス業経営の無料個別相談サービス

私たち船井総研警備ビルメンテナンス経営研究会では、警備業・ビルメンテナンス業経営などの業種・業態に特化した専門的なコンサルティングサービスを提供しています。このような変化の激しい時代の中で、様々なサポートをしていきたいと考え、日々コンサルティングを実施させていただいております。それに際し無料個別相談のお申し込みを受け付けしております。この機会にぜひ下記詳細をご確認くださいませ。

警備業・ビルメンテナンス業経営・採用などに関する無料個別相談サービスはこちらから

機械警備業の関連記事

機械警備業の関連記事に関しましては下記をご覧ください。

【機械警備会社の今後の経営手法!】企業の成長や採用強化に必要なこと
機械警備会社・業務のデジタル化手法!企業の持続的成長を実現するためには?
機械警備会社の「管制管理業務」のポイントと注意すべきこと
機械警備会社の仕事内容と求められるスキル・資格とは?
機械警備会社の巡回要領とは?人手不足の中でも現場を回す方法
【機械警備会社で発生する費用・コストとは?】最適化する方法も含めて解説!
【中小規模の機械警備会社向け】望ましい電話対応の手法を解説

警備業・ビルメンテナンス業の最新時流、経営ノウハウが満載の無料メールマガジン

株式会社船井総合研究所(船井総研)セキュリティー・メンテナンスグループでは、「警備スタッフ・ビルメンテナンススタッフの人材採用・人材募集」、「(新規事業としての)警備業の立ち上げ」など、警備業・ビルメンテナンス業の経営全般の最新情報をお伝えしております。

日々のコンサルティング活動の中での成功事例や、時流の変化、戦略論など、現場主義を大切にした最新コンサルティングノウハウを随時発信していきます!この機会にぜひご登録くださいませ。

無料個別相談のお問い合わせ

WEBからのお問い合わせ

お問い合わせフォームはこちら

お電話でのお問い合わせ

0120-958-270 (受付時間 平日9:00~18:00)0120-958-270 (受付時間 平日9:00~18:00)

警備業・ビルメンテナンス業経営.comを見たとお伝えください。

ページのトップへ戻る