中小の施設警備会社におけるPMVV策定で陥りやすい失敗とは?

2025年11月20日配信

カテゴリ:
営業 定着 育成 警備業界

株式会社船井総合研究所(船井総研)警備ビルメンテナンス経営研究会です。中小の施設警備会社では、経営基盤の強化や人材定着、業績改善を目的にPMVV(Purpose・Mission・Vision・Value)の策定が求められています。しかし、多くの企業でPMVVが形骸化し、現場の行動や経営改善につながらない状況が発生しています。本コラム記事では、施設警備業におけるPMVV策定のよくある失敗要因を解説します。

中小の施設警備会社でPMVV策定が重要視される背景とは

中小の施設警備会社では、経営基盤の強化や採用難の解消、人材の定着率向上が求められています。厚生労働省が公表する労働市場全体の動向(※厚生労働省「一般職業紹介状況」)を見ると、警備員は慢性的な人手不足が続いており、特に施設警備業務は労働力の安定確保が難しい業種とされています。この背景から、企業の Purpose(存在意義)や Mission(使命)、Vision(将来像)、Value(行動指針)を明確にし、従業員の働きがいや目指す方向性を示すことが重要となります。

また、厚生労働省が示す「職場環境改善指針」などでは、働きやすい職場づくりの具体策として、企業理念や行動指針の明確化が有効とされており、PMVVの設計は経営改善や人事施策の基盤として位置づけられています。

しかし、実際の施設警備会社では、PMVVが日々の業務と結びついておらず、単なるスローガンとして扱われてしまう事例が多く見られます。ここでは、なぜ失敗に陥るのか、その典型的な要因を深掘りします。

Purpose(存在意義)が抽象的すぎて社内に浸透しない失敗

中小の施設警備会社では、Purposeを「社会の安全に貢献する」「安心を守る」など、一般的かつ抽象的な表現にしてしまうことがよくあります。しかし、厚生労働省が示す「働きがいのある職場づくり」に関する資料(※厚生労働省「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」等)では、組織理念の具体性が従業員の納得度や行動変容に影響するとされています。

抽象的な Purpose は「結局何を目指しているのかわからない」という状況を生み、現場の警備員が日々の業務で意識することができません。特に施設警備は業務の種類が多岐にわたるため、目的が曖昧だと行動の基準が定まらず、品質のばらつきが発生します。

たとえば、

巡回では何に重点を置くのか

受付・出入管理ではどのような対応を目指すのか

異常時の判断基準は何か

といった「具体的な行動」にまで落ちる明確なPurposeが必要です。Purposeの不明確さは、やる気の低下だけでなく、サービス品質の均一化を阻害する要因となります。

Mission(使命)が日々の業務行動と結びついていない問題

Missionの設定で多くの中小施設警備会社が陥る失敗は、Missionが日常業務の行動と一切結びついていないことです。厚生労働省が示す「業務改善のためのPDCA推進の重要性」や「労働生産性向上支援」などの資料では、組織の目的や使命を現場レベルの行動に落とすことが効果的とされています。

しかし、中小規模の施設警備会社では、Missionが以下のように抽象的で曖昧になりがちです。

「信頼される警備サービスを提供する」

「地域の安全に貢献する」

これは方向性としては正しいものの、現場の警備員にとっては「どう行動すべきか」が見えづらい表現です。その結果、

管制や管理者の指示が属人的になる

現場判断のばらつきが生まれる

警備品質が顧客ごとに変わる

という問題が発生します。

Mission策定のポイントは、業務プロセス・顧客ニーズ・現場の特性を踏まえて具体化することです。厚生労働省が推奨する「職務分析・職務定義」の考え方を取り入れ、職務ごとの使命を定めることが有効です。

Vision(将来像)が数値目標と現場実態に合わないケース

Visionの策定で中小の施設警備会社がよく陥る失敗として、「背伸びしすぎた未来像」または「曖昧すぎる未来像」のどちらかに偏ってしまう点があります。

厚生労働省の「中小企業の生産性向上支援」資料では、将来像の設定にあたり“達成可能性と明確さの両立”が重要だとされています。しかし、施設警備会社では以下のような問題が起きがちです。

売上規模や人員数を現実以上に見積もる

採用難の影響を考慮していない

教育体制の整備が追いつかない

業務品質の現状を正確に把握していない

Visionが現場実態から乖離すると、従業員は「経営者だけが言っている理想」と捉えてしまい、浸透しません。また、達成期日や数値指標が設定されていない場合、Visionがただのスローガンとして扱われる危険があります。

現実的かつ従業員が納得しやすいVisionを描くためには、

現場の声

生産性データ

労働環境

顧客ニーズ

外部環境(厚労省の労働市場データ等)

を踏まえる必要があります。

Value(行動指針)が抽象論で、現場行動に落ちない失敗例

Value(行動指針)が最も形骸化しやすい理由は、抽象的な言葉が並びやすいからです。

「誠実に対応する」

「迅速に報告する」

「安全第一」

これらの言葉自体は正しいものの、厚生労働省が示す「安全衛生の基準」や「職場のコミュニケーション改善」などの資料では、行動指針は具体的であるほど現場浸透しやすいとされています。

抽象的なValueは以下の問題を生みます。

どのような行動が評価されるかわからない

現場の教育で説明できない

管理者ごとに認識が異なる

新人教育に反映できない

「誠実に対応する」を具体化するなら、

「入退室管理において、不明点は必ず確認し曖昧な判断をしない」

「巡回中の異常は5分以内に所定の方法で報告する」

といった形にしなければ、Valueは“実質的に存在していない”のと同じです。

経営トップだけでPMVVを作り、現場を巻き込まない構造的なミス

中小の施設警備会社で圧倒的に多い失敗が「トップダウンのみでPMVVを作る」というものです。厚生労働省が推進する「働き方改革」や「職場のコミュニケーション改善」では、従業員参画型の改善が非常に効果的だとされています。

しかし実際の現場では、

経営者と数名の幹部だけで策定

現場スタッフへの説明は1回きり

フィードバックの機会がない

自分ごと化されない

といった状況が生まれがちです。

施設警備会社の業務は「現場主体」であるため、現場意見を反映しないPMVVは高確率で形骸化します。

現場巻き込みの例としては、

現場リーダーを参加させる

既存業務の課題を共有する

顧客からの評価ポイントを分析する

具体的な行動モデルを共同で考える

といったプロセスが必要です。

PMVV策定後に人事評価・教育システムへ連動させない失敗

厚生労働省の「人材育成支援」や「職務評価制度推進」などの資料では、企業理念・行動指針は人事評価や教育体系と結びつけると効果が高まるとされています。

しかし中小施設警備会社では以下の失敗がありがちです。

PMVVと評価制度が別物

現任教育の指導内容とValueが一致していない

新任教育のカリキュラムに反映されていない

報告・連絡・相談の基準が統一されていない

これでは、PMVVが教育や業務に結びつかず、現場行動が変わりません。

本来であれば、

PMVV → 行動基準 → 評価項目

PMVV → 教育カリキュラム → 指導の統一

という一貫性が必要です。

外部環境(顧客要求・警備業界の制度変化)を踏まえず、古いPMVVを放置する問題

厚生労働省の資料では、企業理念や業務基準は“定期的な見直し”が必要だとされています。しかし多くの中小の施設警備会社では、

PMVVを10年以上見直していない

顧客要件の変化に対応できていない

人材不足・高齢化への対策が含まれていない

業界の労働環境改善の流れに合っていない

といった問題が起きています。

特に施設警備業のニーズは、

顧客の防災意識の高まり

24時間体制の維持難易度の上昇

高齢者雇用の増加

ICT化の進展

などにより変化しています。従って、PMVVも定期的な見直しを行い、新しい現場状況に適応させる必要があります。

策定だけで満足し、運用・点検・改善のPDCAが回らない典型的な落とし穴

厚生労働省が推奨する「PDCAサイクルの徹底」は、業務改善の基本ですが、PMVVでも同様です。しかし、多くの施設警備会社では、

作っただけで運用しない

年次点検や月次確認がない

管理者が活用方法を理解していない

新入社員への説明だけで終わる

という状態になっています。これではPMVVは企業文化として定着しません。

本来必要なのは、

月次会議での進捗確認

現場巡回でのValueチェック

改善提案制度との連動

教育部門との定期共有

といった「運用の仕組み化」です。

PMVVが採用・定着・業績改善につながらない3つの根本原因

PMVVを策定しても経営成果に結びつかない中小の施設警備会社には、共通する根本原因があります。

① 現場行動に落とし込めていない

理念が抽象的なままでは、行動が変わりません。

② 人事評価・教育体系と結びついていない

PMVVと業務・評価が別々に運用されている限り、浸透は困難です。

③ 経営者の発信頻度が足りない

厚生労働省の「職場の一体感醸成」などの資料では、経営者の理念共有が現場浸透に重要とされています。中小企業では、トップの発信量がそのまま浸透度合いに影響します。

PMVVを「作るだけ」で終わらせず、組織づくり・採用・教育・評価・顧客対応のすべてと連動させることで、はじめて経営改善につながります。

結論・まとめ

中小の施設警備会社におけるPMVV策定は、単なる理念づくりではなく、採用難解消・人材定着・業務品質向上・顧客満足向上など、経営の基盤を整える取り組みです。しかし、多くの企業では抽象化、現場不在、運用不足という典型的な失敗が発生しています。

厚生労働省をはじめとする中央省庁が公表している“働きやすさ・生産性・人材育成”に関する指針を踏まえることで、PMVVはより実効性の高い組織基盤となります。

PMVVは作って終わりではなく、現場で「使われて初めて価値を持つ」
——この視点を持つことが、中小の施設警備会社の持続的な成長につながります。

参考資料

厚生労働省

①「一般職業紹介状況(職業別求人・求職状況)」
②「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」
③「職場環境改善に関する施策・ガイドライン」
④「業務改善のためのPDCA推進に関する指針」
⑤「労働生産性向上支援(生産性向上の事例集・施策案内)」
⑥「職務分析・職務設計に関する資料」
⑦「人材育成支援(教育訓練・職業能力開発)に関連する公的情報」
⑧「職務評価制度推進資料(厚生労働省委託事業)」
⑨「職場の一体感醸成・職場改善に関する資料」
⑩「安全衛生に関する基準・行動指針」

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