中小の機械警備会社におけるPMVV策定で陥りやすい失敗とは?

2025年11月21日配信

カテゴリ:
営業 定着 育成 警備業界

株式会社船井総合研究所(船井総研)警備ビルメンテナンス経営研究会です。中小の機械警備会社がPMVV(Purpose・Mission・Vision・Value)を策定する際には、現場との乖離、抽象化、浸透不足など多くの落とし穴があります。本稿では、形骸化を防ぎ経営改善につなげるための具体的ポイントを解説します。

中小の機械警備会社でPMVV策定が求められる背景とは?

機械警備会社は、労働力人口の減少や賃金上昇、顧客の安全需要の多様化など、経営環境が急速に変化しています。総務省「労働力調査」によれば、日本全体の労働人口は中長期的に減少傾向が続き、特に警備業は高齢化率が高く、人材確保が難しい業界のひとつです。

加えて、AI監視、遠隔操作、画像解析などテクノロジーの高度化が進む中、小規模な機械警備会社ほど経営の意思決定軸が曖昧だと、投資判断や人材育成方針が揺らぎやすくなります。そのため、経営と現場をつなぐ「基準」としてPMVVを整備する必要性が高まっています。

特に中小企業では、経営者の経験則に依存した属人的な判断が多く、会社としてのPurpose(存在意義)が曖昧なまま日々の業務が進んでしまうケースが少なくありません。これでは新しい社員が方向性を理解できず、人材の定着力も低下します。

PMVVの策定は、中小の機械警備会社にとって“贅沢な経営スタイル”ではなく、「人材採用」「育成」「業務品質」「顧客満足」を支える“必須の土台”といえます。

目的(Purpose)が曖昧なまま進めてしまう初期段階の失敗

最も多い失敗が、「Purpose(存在意義)」の曖昧さです。中小の機械警備会社では、経営改善の必要性に迫られてPMVVを作成する場合が多く、「作ること」自体が目的化してしまう傾向があります。

しかしPurposeは、“なぜこの地域で警備サービスを提供するのか”、“どのような価値を社会に提供したいのか”を示す根幹です。これが曖昧なままミッションやビジョンを作ると、全体の整合性がなくなり、後々の運用で形骸化します。

さらに、機械警備の場合は「遠隔監視」「緊急対応」「巡回業務」など業務の特性が多岐にわたり、何を中心に据えるのかが明確でない限り、Purposeは社員に届きません。

厚生労働省によると、中小企業が人材を惹きつけるには「企業の理念・価値の発信」が重要と示されています。Purposeの曖昧さは採用力の弱さにも直結するため、ここでの失敗は企業成長を阻害する大きな要因になります。

ミッション(Mission)が現場業務と乖離してしまう問題点

機械警備会社のミッションが失敗しやすい理由のひとつは、管理職や経営陣のみで作成し、現場実態を十分反映していない点にあります。

ミッションは組織の“やるべき役割”を示すものであり、理想論ではなく、日々の業務と直結している必要があります。ところが、PMVV策定の場で「地域の安心を守る」「顧客に最高の安全を提供する」といった抽象度の高い表現にとどまってしまうケースが多くみられます。

実際の現場では、

  • 警報受信時の迅速な判断

  • AI感知異常の対応

  • 設備点検の精度

  • 巡回効率の最適化
    など、具体的な業務が求められます。

現場のリアルがミッションに反映されなければ、社員が「何を最も重視すればよいのか」を判断できず、結果としてミッションは掲示されたスローガンでしかなくなります。

厚生労働省によれば、業務に即した実践的教育の重要性が繰り返し示されています。理念だけを掲げ、現場業務に落とし込めないミッションは、形骸化する典型的な失敗例です。

ビジョン(Vision)が短期的成果に偏り、中長期戦略を欠く失敗

ビジョン策定では、短期目標に偏り過ぎる失敗が多く見られます。特に中小企業では、目の前の売上、契約件数、人件費の圧縮など、短期課題の方が注目されがちです。

しかしビジョンとは、本来は中長期的に「どのような姿の機械警備会社を目指すのか」を示すものです。これが短期成果に寄り過ぎると、未来への投資判断ができなくなります。

例として、

  • 遠隔監視センターの再編

  • AI監視システムへの投資

  • 若手育成プログラムの構築
    など、中長期の成長に不可欠な取り組みが先送りされがちになります。

厚生労働省の資料では、中小企業こそ長期的視点の経営が必要と述べられています。短期成績に偏ったビジョンは、会社を長期的に弱体化させる重大な失敗です。

バリュー(Value)が抽象的で、行動につながらない失敗例

バリューは社員の行動基準であり、最も現場に近い概念です。しかし多くの機械警備会社では、

  • 誠実

  • 迅速

  • 責任感

  • 信頼

などの抽象的な言葉で終わってしまうため、行動レベルに落とし込まれていません。

たとえば「迅速」というバリューを掲げたとしても、

  • 警報受信から何分以内にレスポンスすべきか

  • 巡回の異常発見後の報告フロー

  • 通信障害時の判断基準
    などが示されなければ、社員は“迅速”を何で判断してよいか分かりません。

厚生労働省においては、明確な行動基準を示すことが社員のパフォーマンス向上に効果があるとされています。抽象的なバリューは現場を迷わせるだけであり、形骸化を招く最も典型的な失敗です。

PMVV策定を経営陣だけで完結させてしまう組織巻き込みの欠如

PMVVは会社全体で共有すべき価値観であるにもかかわらず、経営陣のみが作成し、現場社員が関わらないケースが多く見られます。

特に機械警備業務は、

  • 管制室

  • 巡回担当

  • 緊急対処要員

  • 技術スタッフ

など、多様な役割で構成されており、これらの意見が反映されていないPMVVは実効性を欠きます。

現場を巻き込まないまま策定されたPMVVは、社員にとって「自分ごと」にならず、浸透率が著しく低くなります。

厚生労働省によると、社員を議論に参加させることが職場改善に大きく寄与すると明言しています。経営陣のみでPMVVを作ってしまうのは大きな落とし穴です。

現場の実情を踏まえず、外部資料だけで作成する失敗パターン

PMVV策定の失敗として多いのが、外部の一般論だけを参考にした結果、自社の現場実態が反映されていないケースです。特に機械警備においては、地域特性や顧客属性によって業務内容が大きく異なるため、外部資料のみでの作成は致命的なズレを生みます。

たとえば、

  • 都心部では多数の警報対応・駆けつけ件数

  • 郊外では巡回業務の比率が高い

  • 工場・倉庫は設備点検の重要性が大きい

  • 店舗・オフィスは画像監視の比重が高い

など、地域や顧客によって重点が異なります。にもかかわらず、外部の一般論をそのまま引用する形でPMVVを作ると、社員から「うちの実態と違う」と受け止められ、浸透に失敗します。

厚生労働省が提示するポイントの中では、事業場の実態を把握したうえで改善策を策定することの重要性が強調されています。実態を踏まえないPMVVは、実効性を持たない典型的な失敗例です。

策定後の浸透プロセスがなく、形骸化してしまう問題

PMVVを作成しても、それを浸透させる仕組みがない場合、「掲示物」で終わってしまいます。中小の機械警備会社で特に多いのが、策定後に「社内へメールで共有するだけ」「朝礼で読み上げただけ」になってしまうケースです。

PMVV浸透が難しい理由は以下の通りです。

  1. 現場が多拠点・直行直帰で集まりにくい

  2. 機械警備の業務は拘束時間が不規則で研修時間が限定される

  3. 緊急対応業務が多く計画的な教育が難しい

これらの特性から、一般的な業界以上に「浸透プロセス」が重要になります。

厚生労働省によれば、理念浸透には繰り返しの研修、面談、評価反映が必要とされています。PMVVは一度公告しただけでは浸透せず、制度や行動評価に結び付けることで初めて機能します。

PMVVを評価制度や人材育成に結びつけられない運用上の失敗

PMVVを策定しても、それが人事制度や育成計画に反映されなければ、社員の行動変化につながりません。特に中小機械警備会社の経営においては、

  • どの行動が評価されるのか

  • 何が昇格・昇給につながるのか

  • どのような人材を目指すべきか

といった基準が曖昧な企業が多く、PMVVを軸に評価制度を整備することが重要です。

たとえば、

  • 「迅速」をバリューとするなら、警報対応の初動時間

  • 「誠実」を掲げるなら、報告書の正確性

  • 「安全」を掲げるなら、巡回点検の不備発見率

など、定量・定性の両面から評価項目に落とし込む必要があります。

厚生労働省によれば、理念と評価を連動させることが定着率の向上に寄与すると明記されています。PMVVと評価制度が切り離されたままだと、組織は変わりません。

PDCAが回らず、PMVVがアップデートされない状態に陥る要因

PMVVは一度作って終わりではなく、事業環境の変化や業務内容の高度化に合わせて改善が必要です。しかし中小企業では、策定後にPDCAが回らず、内容が古いまま放置されるケースが多くあります。

PMVVの見直しが必要な場面は次の通りです。

  • AI監視・画像解析の導入による業務構造の変化

  • 遠隔監視センター再編による役割の変化

  • 地域の治安や顧客ニーズの変化

  • 採用市場・賃金水準の変化

  • 事業成長に伴う管理職層の拡大

にもかかわらず、PMVVが“古いまま放置”される理由は、

  • 担当部署が曖昧

  • PDCAの周期が設定されていない

  • 見直しの基準がない

  • 業務が繁忙で後回しになる

といった構造的なものです。

厚生労働省が提示しているガイドラインの中では、継続的改善が組織の業績向上につながると示されています。PMVVも定期的なレビューを行うことが不可欠です。

結論:PMVVは“作ること”より“運用すること”が重要である

中小の機械警備会社におけるPMVV策定で陥りがちな失敗を見てきましたが、共通しているポイントは「作ることが目的化してしまう」という点です。

PMVVは経営戦略や人材育成、業務品質を支える「基準」であり、以下の運用が徹底されて初めて機能します。

  • Purpose(存在意義)を現場と経営陣が共有すること

  • Mission(役割)を日々の機械警備業務に落とし込むこと

  • Vision(未来像)を中長期の事業成長に結びつけること

  • Value(行動指針)を具体的な基準にまで明確化すること

  • 社員を巻き込みながら浸透と改善を繰り返すこと

厚生労働省の資料によれば、理念や価値観は「実際の行動変容」と結びつけて初めて効果を発揮します。中小の機械警備会社こそ、PMVVを形骸化させず、日々の業務改善・人材定着・顧客満足につながる形で運用できるかが、今後の競争力を左右します。

PMVVは“経営者の作った理念”ではなく、“社員全員で共有する行動の指針”です。策定だけで終わらせず、運用を強化することで、組織の一体感と業績向上の両立が実現されるでしょう。

参考資料

  1. 厚生労働省「人材確保支援対策」

  2. 厚生労働省「安全衛生教育指針」

  3. 厚生労働省「中小企業の生産性向上支援」

  4. 厚生労働省「職務基準整備の重要性」

  5. 厚生労働省「職場環境改善のための参加型アプローチ」

  6. 厚生労働省「働きやすい職場環境整備のポイント」

  7. 厚生労働省「職場定着支援のための教育体系整備」

  8. 厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成・評価制度)」

  9. 厚生労働省「業務改善ガイドライン」

  10. 総務省統計局「労働力調査」

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