【警備業】巡回・点検・出入管理のDX推進方法を解説

2025年12月2日配信

カテゴリ:
DX 営業 育成 警備業界

株式会社船井総合研究所(船井総研)警備ビルメンテナンス経営研究会です。警備業の巡回・点検・出入管理は、人手不足と属人化が深刻化しやすく、中小警備会社にとって品質低下が大きな課題です。本コラム記事では、デジタル化による改善策、導入手順、教育体制、BCP対応までを体系的に解説します。

巡回・点検・出入管理の現状課題とDX導入の必要性

警備業務の中でも巡回、点検、出入管理は、現場運用の基盤となる重要な業務です。しかし、中小規模の警備会社では、紙台帳・手書き記録・口頭報告がいまだに主流であり、業務品質のばらつきが発生しやすい環境が続いています。

さらに、厚生労働省「労働力調査」が示すとおり、警備員は他産業と比べて高齢化率が高く、人材不足が長期的課題になっています。現場の教育負荷・作業負荷は増し、結果として巡回や点検の「やり漏れ」、出入記録の「記入ミス」が生じやすい土壌が形成されてしまいます。

こうした課題を解決するため、政府は内閣府や総務省を中心に「中小企業のデジタル化」を強く推進しています。警備現場でも同様に、デジタル化・DX化が経営課題として位置づけられ、業務の標準化・効率化・可視化の実現が急務となっています。

DX導入によって得られる効果は多岐にわたり、巡回のルート最適化、点検記録の一元管理、出入情報の精度向上など、現場品質の底上げに直結します。特に中小企業では、限られた人数でも品質を維持できる「仕組み化」が重要であり、DXはその核心を担う要素になります。

警備DXの基本概念と中小警備会社が得られる効果

警備DXは、経済産業省の「DX推進ガイドライン」に沿った業務変革を警備領域に適用するものです。単なるデジタルツールの導入ではなく、業務プロセスそのものを改善し、最終的には企業の競争力を高める取り組みです。

巡回や点検、出入管理のDXには以下のメリットがあります。

記録の正確性が向上する
紙記録の誤字・記入漏れ・紛失を防ぎ、管理者・顧客双方にとって信頼される証跡になります。

属人化が減り、品質が安定する
誰が担当しても同じクオリティのサービス提供がしやすくなります。

労働時間管理の適正化につながる
厚生労働省「労働時間管理のガイドライン」で求められる労務管理の透明性が高まり、残業時間の把握やシフト調整が容易になります。

データ活用が可能になる
巡回ルート、点検結果、入退場履歴がデータとして蓄積され、配置最適化やクレーム予防に役立ちます。

教育効率が高まる
操作手順や点検基準がデジタルで統一され、新人でも現場に入りやすくなります。

DXは「人を減らす」施策ではなく、「人が働きやすくなる」施策であり、正しく導入すれば業務品質・生産性・労働環境すべてを改善できます。

巡回業務のDX|GPSやIoTを活用した移動管理の実践方法

巡回業務では「今、どこを巡回しているのか」「予定どおり巡回できているのか」を把握することが品質管理の要になります。しかし、従来の電話報告や紙チェックではリアルタイム把握が困難でした。

GPS端末やIoTデバイスを活用すると、巡回員の位置情報が即時に管理画面へ送信され、移動状況や滞在時間を把握できます。これは、内閣府が災害時の情報インフラとして推奨する「リアルタイムな状況把握体制」の考え方とも親和性が高い仕組みです。

また、巡回データは蓄積することで、以下のような改善に活用されます。

  • 無駄な動きを減らすルート最適化

  • 過剰配置の見直し

  • 夜間巡回のリスク管理向上

  • クレーム発生時の記録確認

巡回業務は人の移動が中心であるため、DXの効果が非常に分かりやすく、短期間で成果が出やすい領域といえます。

点検業務のデジタル化|電子化チェックシートで品質を底上げする方法

点検業務は、記録の正確性が品質に直結します。しかし、紙ベースでは点検記録漏れ、誤記入、報告の遅延などが起こりがちで、管理者が後追いで修正に追われるケースも多いのが現実です。

電子チェックシートを導入すると、スマートフォンやタブレットから点検項目が一覧化され、入力忘れや誤記が減少します。写真や動画の添付も可能になり、顧客や管理者への報告がより明確で客観的になります。

さらに、点検データはクラウド上で集約され、設備の劣化傾向や異常傾向の把握にも役立ちます。中小企業庁が推進する「中小企業の生産性向上」の文脈にも合致する仕組みであり、点検のDXは現場効率化の象徴的な取り組みといえます。

出入管理DX|顔認証・ICカード・クラウド記録で業務効率を最大化する方法

出入管理は、誰がいつ入退場したかを正確に記録することが重要ですが、紙台帳の運用ではミスや抜け漏れが生じやすく、証跡確認にも時間がかかります。

顔認証、ICカード、QRコード、クラウド記録を活用すると、記録精度が飛躍的に向上し、管理者の負担が大幅に減少します。特にクラウド型管理は、総務省が推進する「クラウド・バイ・デフォルト原則」とも一致し、長期保管や監査時の確認にも適しています。

出入管理のDXは「現場管理の負担軽減」「データ証跡の向上」「顧客への報告品質の向上」に直結し、最も効果を実感しやすい分野のひとつです。

警備員の配置最適化を実現するデータ活用のポイント

巡回データ、点検データ、出入管理データがデジタル化されると、配置判断に利用できる情報量が大きく増えます。

中小警備会社がデータ活用によって得られる主な効果は以下です。

  • 作業負荷バランスの最適化

  • 過剰配置・不足配置の是正

  • 残業抑制による労務リスクの低減

  • 顧客要求へ即応する体制の整備

  • コスト削減と利益率改善

厚生労働省が示す労働時間管理のガイドラインでは、勤務時間の適正把握が求められています。DXはまさにその「透明性の確保」をサポートし、コンプライアンス強化にも大きな効果を発揮します。

配置最適化は単なる省力化ではなく、「安全性・品質・効率」のバランスを高い次元で実現するための経営施策として位置づけられます。

防災・BCP対応におけるDX|緊急時の情報共有を強化する方法

内閣府「事業継続計画(BCP)」では、緊急時の情報共有体制整備が重要視されています。警備会社においても、災害時に巡回・点検・出入管理が混乱しない仕組みを備えておくことは不可欠です。

DXを活用した情報共有体制には、以下の特徴があります。

  • 巡回員・現場責任者がリアルタイムで状況を共有

  • 被害状況を写真・動画で即時アップロード

  • 警備員の安否確認を迅速に実施

  • 施設側ともクラウドで連携

従来の電話連絡やFAXでは時間差が大きく、正確な情報が共有されないことが問題でした。DXによるリアルタイム連携はこの課題を根本的に解決します。

また、巡回・点検データが蓄積されていれば、平常時と異なる兆候を早期に発見しやすく、BCP観点でのリスク予防にも繋がります。

中小企業でも導入しやすい警備DXツールの選び方

DXを成功させるためには、ツールの選定が極めて重要です。特に中小企業では「操作が複雑すぎる」「運用が定着しない」という失敗が起こりがちです。

ツール選定で重視すべきポイントは以下です。

  • 操作性がシンプルで現場に馴染みやすい

  • スマホ・タブレットで直感的に使える

  • ランニングコストが適正

  • クラウドでデータを一元管理できる

  • 管理画面が分かりやすく、教育しやすい

  • 保守・サポート体制が整っている

また、総務省が示す「情報セキュリティ対策ガイドライン」に沿った安全性を確保することも必須条件です。

中小企業では、まず小規模導入から始め、成功事例を社内で作る「スモールスタート」が効果的です。

DX推進に必要な教育・研修体制|現場のデジタルリテラシーを高める方法

DXはツールを入れるだけでは成功しません。最も重要なのは、現場で働く警備員のデジタルリテラシーを高め、運用を定着させることです。

教育体制づくりで押さえるべきポイントは以下です。

  • まず管理者層にDXの目的を浸透させる

  • 現場が迷わない「運用ルール」を明確化

  • シンプルで分かりやすいマニュアルを用意

  • 操作説明会を定期開催

  • 現場の声をツール改善へフィードバック

厚生労働省が提唱する「人材開発支援施策」では、デジタルスキル教育の重要性が強調されています。警備業でも同じく、教育こそがDXの成否を左右します。

DX導入成功に向けた経営視点のロードマップ

最後に、中小警備会社がDX推進を成功させるための実行ステップを整理します。

  1. 課題の棚卸し

  2. デジタル化の優先順位決定

  3. スモールスタートで運用開始

  4. 収集データの可視化・分析

  5. 配置・改善業務への展開

  6. 全社への横展開

  7. 継続的な教育・改善

DXは「一度導入して終わり」ではなく、継続的な更新・改善が前提です。経営層が主体となり、目的と効果を繰り返し発信することで、現場の理解と協力が得られやすくなります。

参考資料

  • 厚生労働省「労働力調査」

  • 厚生労働省「労働時間管理のガイドライン」

  • 内閣府「デジタル社会の実現に向けた改革」

  • 内閣府「事業継続計画(BCP)ガイドライン」

  • 総務省「情報セキュリティ対策ガイドライン」

  • 経済産業省「DX推進ガイドライン」

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