【警備業】研修体系に出入管理を組み込むメリットを解説

2025年12月4日配信

カテゴリ:
DX 営業 育成 警備業界

目次

株式会社船井総合研究所(船井総研)警備ビルメンテナンス経営研究会です。警備業における出入管理は、現場品質と顧客満足度を左右する重要業務です。本コラム記事では、研修体系に出入管理を組み込むメリットを経営者視点で解説し、標準化・DX活用・教育効果向上など、人手不足時代の中小警備会社が取り組むべき実践策を示します。

警備業における研修体系の重要性と出入管理の位置づけ

警備業務において、研修体系を整備することは企業の品質維持に直結します。特に出入管理は、日常業務の中でも頻度が高く、顧客満足度や信頼性に大きく影響する領域です。しかし、多くの中小警備会社では“現場任せ”になりやすく、体系的な教育が不足しているのが現実です。

厚生労働省が示す「職業能力開発指針」では、体系的な教育・研修が業務品質向上に寄与すると明記されています。これは警備業にも当てはまり、特に出入管理は「業務の基本」でありながら「ミスが発生しやすい領域」であるため、研修体系に組み込むべき最重要項目だと言えます。

研修体系の整備は、単なる教育ではなく、企業全体の品質保証の仕組みです。出入管理を体系的に組み込むことで、属人化を防ぎ、誰が担当しても一定の品質が確保される再現性をつくることが可能になります。

出入管理を研修に組み込むべき背景と業界特有の課題

出入管理が研修で扱われにくい背景には、警備業界特有の課題があります。
一つは、「現場によってルールが異なるため、教育が複雑になりやすい」という点です。
もう一つは、「日常的な業務であるがゆえに、重要度が低く見られやすい」という点です。

しかし実際には、出入管理は顧客の安全に直結する重要業務であり、トラブルが発生すると信頼性の低下につながります。たとえば、


・持ち込み品の確認漏れ
・外来者の許可証確認不足
・入退室記録の不備

などは、重大なクレームおよび事故につながる可能性があります。厚生労働省が発表する「労働災害防止のための指針」でも、作業手順の明確化と研修による理解促進の重要性が示されており、警備業の出入管理も同様に体系的な教育が必要です。

業界特有の“現場任せ構造”を変えるためには、研修体系の中に出入管理を正式に位置づける必要があるのです。

新人教育で出入管理を学ぶメリットとは?

新人研修に出入管理を確実に組み込むことには大きなメリットがあります。
特に、現場でのミスを減らし、早期戦力化を図るうえで非常に効果的です。

新人教育で出入管理を学ぶメリットは次の三つです。

①基本業務を確実に理解できる

出入管理は警備業の基本であり、全ての現場で必要とされます。
ここが理解できていないと、他の業務も安定しません。

②ミスの多いポイントを事前に把握できる

研修で、実際に起こりやすいミス事例を学ぶことで、リスク意識を高めることができます。

③顧客ルールへの適応力が高まる

出入管理は顧客によって細かく異なるため、研修で基礎を理解しておくことで現場適応が早まります。

厚生労働省が示す「教育訓練の体系化に関する資料」でも、職業技能の定着には初期教育が最も効果的であるとされています。
出入管理を新人研修に組み込むことで、定着率と品質を同時に高めることが可能です。

現場運用の再現性を高める出入管理研修の効果

警備業における大きな課題の一つは、「担当者によって品質が異なる」という再現性の低さです。この問題は、出入管理を研修体系に組み込み、教育を標準化することで大きく改善できます。

出入管理研修が再現性を高める理由は以下の通りです。

①判断の基準が統一される

研修で共通の基準を学ぶため、担当者間の解釈差がなくなります。

②手順が明確になり、抜け漏れが減る

手順が統一されることで、業務がスムーズになり、ミスが減少します。

③現場ごとの差が縮小する

本社主導の研修体系により、どの現場でも同じ品質の出入管理が提供できるようになります。

さらに、厚生労働省の「安全衛生教育の推進ガイドライン」では、標準化した教育が安全確保に不可欠であると示されています。
出入管理研修を標準化することは、企業全体の品質保証に直結する重要な取り組みなのです。

出入管理を体系化することで現場ミスを減らす方法

出入管理の体系化は、現場ミスを減らすための最も効果的な方法です。体系化とは、ルール・手順・教育・評価を一体的に整備することを指します。具体的なミス削減方法は以下の通りです。

①チェックリストの導入

現場で確認すべき項目を明確化し、忘れを防ぎます。

②手順書の簡素化

複雑な手順はミスを生むため、誰でも理解できる形に整えます。

③繰り返し学習を可能にする教材化

動画・図解などの教材を組み込むことで、短時間でも効果的な学習が可能です。

④定期的なフィードバック

現場状況を見ながら小さな改善を積み重ねることで、ミスの発生率を下げることができます。

厚生労働省が推奨する「リスクアセスメント」の考え方とも一致し、事前にリスクを把握し、対策を講じる体制をつくることができます。

体系化は、一過性の研修ではなく、継続的に品質を向上させる持続的仕組みです。

顧客満足度向上につながる出入管理教育の役割

出入管理の品質は、顧客評価に大きな影響を与えます。
顧客企業にとって、警備会社を評価するポイントの一つが「基本動作の確実性」であり、出入管理の丁寧さはその象徴だからです。

出入管理教育が顧客満足度向上につながる理由は以下の通りです。

①トラブル対応力が向上する

教育を受けているスタッフは、異常時に適切な判断をしやすくなります。

②説明責任を果たせる状態になる

記録の取り方、手順の理解が深いため、顧客からの問い合わせに確実に対応できます。

③顧客ごとのルールに適応しやすくなる

基礎が身についているため、現場特有のルールを理解するのが早くなります。

DXと組み合わせることで、記録の正確性が増し、報告の迅速性も向上するため、顧客企業からの信頼性がさらに高まります。

指導教育責任者が押さえるべき出入管理指導ポイント

指導教育責任者は、出入管理研修において中心的な役割を果たします。
教育の質が現場品質を左右するため、以下のポイントを押さえることが重要です。

①重要度の理解を徹底させる

単なる手順ではなく、“安全と信頼を守る業務”であることを伝える。

②実例ベースで教える

抽象的な説明よりも、実際のトラブル事例を用いると理解が深まります。

③ロールプレイで実践力を鍛える

見る・聞くだけではなく、実際に体験することで再現性が高まります。

④評価基準を明確化する

到達基準が曖昧だと、教育のゴールが不明確になります。

厚生労働省の「職業訓練指針」でも、実践的学習の重要性が強調されており、警備業でも同様です。

定期研修・振り返りに出入管理を含める必要性

出入管理は一度研修しただけで永続的に品質が維持されるものではありません。現場の状況や顧客ルールは常に変化し、担当者の理解度も時間とともに低下します。そのため、定期研修・振り返りの中に継続的に出入管理を位置づけることが重要です。

特に中小警備会社では、スタッフの入れ替わりが他業種に比べて多いため、知識の風化を防ぐ仕組みが欠かせません。厚生労働省の「安全衛生教育の推進ガイドライン」でも、継続教育の必要性が強調されており、安全確保には繰り返し学ぶことが不可欠とされています。

定期研修に出入管理を組み込むメリットは以下の三つです。

①新しいルールや顧客要望が反映される

顧客企業の入退室基準は頻繁に更新されることがあり、その情報を定期研修で共有することで、現場全体の認識を統一できます。

②過去に発生したミスやヒヤリハットの振り返りができる

現場で起きたトラブル事例を共有し、どの手順が抜けていたのか、どこに改善余地があるかを分析できます。

③担当者の理解度に応じて再教育が可能になる

人によって理解の進み方は異なります。定期研修は理解度のばらつきを解消する機会になります。

こうした振り返り活動を継続することで、出入管理は“現場任せの業務”ではなく、“組織として品質を保証する仕組み”へと進化していきます。

DX活用で出入管理研修を効率化する方法

人手不足が常態化する中小警備会社では、「研修にかける時間が取れない」という課題があります。そこで重要になるのが、DXによる研修効率化です。研修体系全体にデジタルを組み込むことで、作業時間を大幅に短縮しつつ、教育効果を高めることができます。DX活用のポイントは以下の三つです。

①動画教材による反復学習の実現

出入管理の手順は、実際の動きを見ながら学ぶことで理解が深まります。
動画教材を用いることで、
・新人が自分のペースで学べる
・何度も繰り返し確認できる
・指導者の説明品質の差がなくなる
といったメリットが得られます。

厚生労働省も「視覚教材の活用は学習効果が高い」と指導しており、効率的な研修方法として推奨されています。

②デジタルチェックテストによる理解度の可視化

出入管理の理解度は、質問形式のテストや確認チェックで可視化することができます。
紙のテストでは管理が煩雑ですが、デジタルなら履歴管理も容易です。

・理解不足の項目が明確化
・到達度をデータ化し管理できる
・教育の公平性が担保される

これは総務省が推奨する「データ活用による業務効率化」とも一致するアプローチです。

③モバイル端末を活用したOJT支援

スマートフォンやタブレットを活用し、現場で手順を確認できる状態にしておくことで、OJTの効率が上がります。
・手順書
・チェックリスト
・動画教材
を現場で即確認できるため、教育時間の短縮につながり、ミス防止にも寄与します。

デジタルを研修体系に組み込むことで、教育のスピードと品質がともに向上し、人手不足の影響を最小限に抑えることができます。

出入管理を強化する研修体系を整えた警備会社の将来像

研修体系に出入管理を正式に組み込むことで、警備会社は“教育・運用・改善”の三位一体モデルを構築できるようになります。この体制を整えた企業には、次のような将来像が期待できます。

①現場品質が安定し、顧客からの評価が高まる

ルール、手順、教育が統一されることで、現場品質が安定し、顧客からの信頼が強まります。
出入管理は顧客の印象に残りやすいため、品質が高いほど安全性・信頼性のアピールになります。

②新人の早期戦力化と離職率の低下につながる

体系的な研修により、新人が短期間で安心して現場に入れるようになります。
教育が整っている会社はスタッフの不安が軽減されるため、離職率低下にも寄与します。

③ミス・トラブルの減少により管理コストが下がる

出入管理のミスが減れば、
・トラブル対応
・顧客への説明
・管理者のフォロー
などのコストも大幅に減少します。これは経営的にも大きなメリットです。

④DXとの相乗効果で業務効率が最大化される

研修体系でデジタル教材が整備されていれば、DX導入もスムーズに進みます。
教育と現場運用がデジタルでつながることで、「少人数でも回る現場」が実現しやすくなります。

⑤競合他社との差別化ができる“教育力の高い会社”へ成長

警備業界では、研修体系のレベルが企業ごとに大きく異なっています。
出入管理まで体系的に扱える会社は数が少なく、差別化要因として大きく機能します。

教育体系を強化した会社は、
・採用面で有利
・顧客評価が高い
・品質の安定
といった好循環を生み、持続的成長が可能になります。

参考資料

  • 厚生労働省「職業能力開発に関する資料・ガイドライン」

  • 厚生労働省「安全衛生教育の推進ガイドライン」

  • 厚生労働省「労働災害防止のための指針」

  • 内閣府「デジタル社会に関する基本方針」

  • 総務省「自治体DX推進手引き」

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