異業種から警備会社へ新規参入するためのガイド

2025年12月9日配信

カテゴリ:
営業 採用 警備業界

株式会社船井総合研究所(船井総研)警備ビルメンテナンス経営研究会です。警備業への新規参入を検討する中小企業や異業種企業が押さえるべき許認可、採用、人材教育、収益構造、スモールスタート手法などを解説しています。これから警備会社を立ち上げたい企業に役立つガイドです。

※これらは警察庁および公安委員会が公開する指針に基づく一般的事項であり、個別の法律判断ではありません。

警備業界の現状と市場環境を理解する

警備会社への新規参入を検討する際、まず押さえておくべき要素に「警備業界の現状」があります。警備業界は、警察庁が毎年公表する『警備業の概況』などによれば、全国の警備業者数は増加傾向にあり、異業種からの参入も極めて多いと報告されています。

警備業は建設、ビルメンテナンス、物流、小売など幅広い業界で需要が高まり、事業機会は拡大しています。とくに2020年代以降は、交通誘導警備や施設警備、イベント警備などにおける人材需要が増加しており、社会インフラ支援産業としての重要度が高まっています。

さらに警備業界は、有資格者の役割が明確化され、教育体制や労働時間管理など、法令に基づく適切な運営が求められています。これは、異業種から新規参入する企業にとっては、参入後の成長の明確な指針となります。

一方、業界が求める品質基準を理解していなければ、参入後の運営が難しくなる可能性もあります。

警察庁の資料によれば、警備業者数は毎年増加しているものの、一社あたりの規模には大きな差があります。多くの企業が中小企業であり、スモールスタートしながら地域需要に合わせて事業を拡大している点が特徴です。

この構造は、中小企業が新規参入しやすい環境につながっています。

異業種から警備会社へ新規参入が増えている背景とは

近年、異業種から警備業へ参入するケースが増えています。背景には、複数の要因が存在します。

まずひとつは、警備需要の増加です。人口減少により労働力不足が深刻化する中、施設警備、交通誘導警備、巡回警備の需要はむしろ増えており、継続的に人材が求められています。

とくに公共工事や設備点検業務において、警備員の配置が義務づけられているケースも多く、安定した需要に支えられています。

二つ目の要因は、法令に基づく明確なルールが存在するため、異業種でも参入しやすい点です。教育、資格、業務区分が明確に定められており、それに沿って体制を整えれば、品質がブレにくい運営が可能となります。

三つ目の要因は、既存事業とのシナジー効果です。ビル管理会社、建設会社、イベント運営会社、人材派遣会社などは、既存取引先から警備業務を求められることが多く、「事業拡大の一環として警備会社を設立する」という流れが増えています。

さらに中小企業庁や内閣府が公表している資料によれば、地域社会における安全需要は継続的に増加傾向にあり、官民連携による防犯・防災施策が進むなかで警備業の必要性は高まっています。これらの要因が、異業種からの参入増加を後押ししています。

警備会社を立ち上げる際に必要となる基本的な許認可

警備会社を立ち上げるためには、まず「公安委員会による認定(認定証の取得)」が必要です。警備業法に基づき、各都道府県公安委員会への申請を経て、認定を受けなければ警備業を営むことはできません。

警察庁が定義する認定制度では、法人の場合は役員の欠格事由、営業所の設置、必要書類の整備などが求められます。警備業法に記載されている内容を一般的に説明すると、次のような要件が重要です。

  • 欠格事由に該当しないこと(暴力団関係や一定の犯罪歴など)

  • 営業所の所在地や運営体制が明確であること

  • 警備員の教育体制が確保されていること

  • 名簿、教育記録、業務管理体制などの整備が可能であること

申請後、公安委員会による審査を経て認定が下りると、晴れて警備業を開始できます。

※これらは警察庁および公安委員会が公開する指針に基づく一般的事項であり、個別の法律判断ではありません。

警備会社のビジネスモデルと収益構造を理解する

警備会社の収益構造は比較的シンプルで、「警備員の配置に応じた売上」が基本となります。業務は1号警備(施設)、2号警備(交通誘導)、雑踏警備、巡回、機械警備などに分類されます。

新規参入企業はまず、地域の需要に合った業務から始めるケースが多く、特に交通誘導警備や施設警備は需要が大きい分野です。

収益構造の特徴は、

  • 人件費がコストの大部分を占める

  • 営業利益率は安定しやすい一方、採用・教育の質が収益に大きく影響する

  • 長期取引が多く、安定的な事業運営ができる

といった点が挙げられます。警察庁によれば、警備業界全体の売上高の多くが人件費によるものであることが示されていますが、同時に適切な教育と資格者配置によって品質を確保する仕組みも整っています。

異業種から参入する場合は、この収益と品質の関係を理解し、人材戦略・営業戦略と連動させることが重要です。

新規参入企業が失敗しやすいポイントと対策

異業種参入で最も多い失敗例は、「人材確保」と「教育体制の不備」です。警備業は人材ビジネスの側面が強く、採用力が業績に直結します。採用競争は激しいため、求人内容、給与設定、働きやすい環境づくりなどが欠かせません。

次に多いのが「法令遵守の体制づくりが不十分なまま営業してしまう」ケースです。警察庁や公安委員会の指導内容を理解し、教育記録・名簿・指揮命令系統を整えることが必要です。

営業面では「単価だけで受注し、無理な契約を結んでしまう」ことが失敗要因となります。警備業は長期契約が多いため、適正な価格設定と現場管理が重要です。

警備会社の根幹は「人材」です。警察庁からも、教育制度の重要性が繰り返し示されており、

  • 新任教育

  • 現任教育

  • 資格取得支援

などが求められています。採用では、シニア人材や未経験者を積極的に活用する企業も多く、働きやすい環境を整備することで応募者を増やせます。

教育体制を整えることは、単に法令遵守のためだけでなく、警備品質の向上、離職率の低減、顧客満足度の向上にもつながります。

※これらは警察庁および公安委員会が公開する指針に基づく一般的事項であり、個別の法律判断ではありません。

営業活動と取引先開拓で成果を出すための方法

新規参入企業が成果を出すには、「特定の市場に強い警備会社」としてのポジションを確立することが有効です。
例えば、

  • 建設現場に特化した交通誘導警備

  • 商業施設に特化した施設警備

  • 地域イベントに強い雑踏警備

など、専門性を示すことで営業力が高まります。また、取引先は「長期契約」になることが多く、信頼関係の構築が不可欠です。実績が乏しい新規参入企業は、丁寧な対応と提案力が差別化につながります。

小規模でも始められるスモールスタート運営術

中小企業が警備業へ参入する際は、スモールスタートが現実的です。具体的には、

  • 交通誘導の小規模案件から受注

  • 教育や配置を少人数からスタート

  • 営業所の効率的運営

などが挙げられます。警備業は固定費が大きくなりやすい事業ですが、小規模で適正に運営することでリスクを抑えながら成長できます。警察庁が公開する制度に沿って運営すれば、品質を担保しながら拡大が可能です。

異業種参入で成功する警備会社に共通する特徴と今後の展望

成功している新規参入企業には、いくつかの共通点があります。

  • 法令遵守体制が強い

  • 教育と人材育成に力を入れている

  • 顧客とのコミュニケーションが丁寧

  • 業務品質を維持する社内仕組みがある

  • 分野特化の営業戦略が明確

さらに、今後の展望として、警察庁が指摘する「機械警備の高度化」「地域安全施策の共同化」などが進む可能性があります。人材不足が続く中、異業種企業の参入は今後も増加すると見込まれます。

参考資料

  • 警察庁「警備業の概況」

  • 警察庁「警備業法に関する資料」

  • 各都道府県公安委員会「警備業認定申請案内」

  • 内閣府「治安・防災関連統計」
  • 中小企業庁

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